過去の成功例が通用せず、優れた手法はすぐに真似される「正解がない時代」。真面目で優秀な人ほど正攻法から抜け出せず、悩みを抱えてしまいます。リクルートに入社し、25歳で社長、30歳で東証マザーズ上場、35歳で東証一部へ。創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家、株式会社じげん代表取締役社長執行役員CEO・平尾丈氏は、「起業家の思考法を身につけることで、正解がない時代に誰もが圧倒的成果を出すことができる」と語ります。「自分らしく」「優秀で」「別の」やり方を組み合わせた「別解」を生み出すことで、他人の「優等生案」を抜き去り、突き抜けた結果を実現することができるのです。本連載では、平尾氏の初の著書となる『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』をテーマに、3月30日の早朝に開催されたイベント「朝渋」の内容をお伝えします。(聞き手・西村創一朗、構成・林拓馬)

「新卒で入社しながら、自分の会社も経営する」後悔しない就職ができた理由Photo: Adobe Stock

「起業家の思考法」は令和版「学問のすゝめ」

―――『起業家の思考法』を出版されてから、どんなフィードバックや反響が届いていますか?

平尾丈(以下、平尾):やっぱり別解のベン図の反響が一番大きいですね。「言語化できていなかったけど、こういうことなんだ」とか、「構造化してもらってありがたいです」とか。

逆に「時間軸や相対性で変わります」など、いろいろな指摘や反響をいただきました。このベン図が発射台になって、様々な議論が生まれることが、非常にいいことだと思っています。まだまだ私も勉強できますし、「別解力」も進化させていきたいです。

――面白いですね。まさに令和版『学問のすゝめ』のように、後世に残るような思考法にする思いで本を出版されたんですね。平尾さんは、SFCに進学をされてから、一度目の学生起業をされたわけですけれども、どんなところから始めて、どんな事業で起業をされたんですか。

平尾:起業を応援する先生のゼミがあり、SFCでは1年生からゼミに入れるので、最初はそこに入りました。そこで初対面の人たちと侃々諤々議論しながら起業したのが、1回目です。

学生起業では「人、モノ、金」といわれる経営の3資源のうち学生なので「お金」がありません。ただ、友達は割と多くて、「人」はいました。私はSFCの環境情報学部に入っていたので、エンジニアの知り合いも多く、「モノ」もつくることはできる。では「お金」はどうすればいいか。先生に相談すると、紹介されたのは、ビジネスプランコンテストでした。それにみんなで出たのが、最初のきっかけですね。そこで優勝して、そのお金で起業しました。

―――『起業家の思考法』にある「失敗力」の章で、「3ヵ月前に戻るとしたらどうするか?」という問いに答えられるかどうかが大事だと書かれていましたが、さらにタイムスリップして、もし平尾さんが学生当時に戻れるとしたら、どんなふうに行動していましたか?

平尾:いまはクラウドファンディングもあるし、ベンチャーキャピタルの方もたくさんいらっしゃるので、ビジコンに出ずに起業しているかもしれません。また、当時はSFCの学生たちと起業したんですけど、今だったら学生など関係なく、もっと多様性のある色々な方と起業しているかもしれません。

就職と経営の両方を選ぶ

―――学生起業で一定の成功をされると、就職せずに自分の会社の経営に専念するか、一旦会社たたんで就職するどちらかにいきがちなところを、平尾さんは会社を経営したままリクルートに入るという別解を実現されています。このあたりはどういった背景があったのですか。

平尾:SFCでは時間を忘れてプログラミングしたり、経営学を学べたりして、すごく成長できたんです。

一方で、学生ベンチャーとしてやっている中で、このままの規模でやっていてもいいのか、自分はもっと成長しないといけないと思ったことが就職を考えたきっかけです。

そして、就活をしたらSFCで頑張ってきたことや起業したことについて、いろんな社会人の先輩方が興味持ってくださいました。たくさんの社会人の方とのお話の中で。学生ではできなかったことを棚卸ししながら、やはり就職をしたいと思いました。

たくさんの業界を見ていたのですが、当時はすごく苦手だった事業の作り方、そして作った事業をどう伸ばすのかを勉強ができるという点で、リクルートを選びました。

その後、学生起業家選手権で優秀賞をいただいて、就職するか、会社を継続するか、迷っていて「起業したままリクルートに入ってもいいですか」と話したところ、お許しをいただけたことが、最後の決め手になりましたね。

―――いまでは副業が広がってきたので、起業して、自分の会社を経営しながら別の会社で働く人も増えてきましたけど、当時はあまり前例がない話だったと思います。直談判するという選択すらなかなか持てない中で、その別解による突破力はすごいなと改めて思いました。入社後も23歳から大抜擢されていますし、リクルートに入社することを選んで、結果的に全く後悔は無かったんじゃないかなと思いますけれど、いかがですか。

平尾:そうですね。SFCが私のターニングポイント「その1」で、「その2」はやはりリクルートに就職したことだと思っています。あの規模の事業会社を20代で見ることができましたし、当時の状況の中で社内では本当に先進的なことをいろいろとやらせてもらえました。

起業してからはやっぱり大変ですよね。いろんな難題を解決しなければならないとき、ある程度の事業の大きさまではリクルート時代に見ているというのは、非常に強いインプットです。起業時からあまり意思決定に迷わず経営ができたのは、大きなアドバンテージになっています。

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