慢性的な腰痛持ちなら、一度は「少し痩せなさい」と言われたことがあるだろう。ただ、どれだけ体重を落とせば腰痛リスクが減るのかは不明だった。
山形大学の研究グループは「反実仮想モデル」という手法を使い、4年間の体格指数(BMI)の変化が、6年後の腰痛リスクに及ぼす影響を検討している。
解析対象は英国の加齢縦断研究に参加した6868人分のデータ。腰痛の有無は10段階の痛みスケール(10が最強度)で5以上を「腰痛持ち」とし、参加登録時と追跡4年後、同6年後の調査データを利用している。
比較対象は、仮にBMIが4年間でマイナス25~25%までの5%刻みに増減した場合の10段階で6年後の腰痛リスクを推計した「仮想モデル」で、実際のデータと比べている。この際、BMI増加はBMI18.5(やせ)以上のモデルで、減少は同25(肥満)以上のモデルで計算した。
さらに、全身の筋力を反映する「握力」の弱い群(下位50%)と強い群(上位50%)とにわけた解析も行っている。
その結果、BMIが4年間に5%増加すると、6年後の腰痛の発症リスクが11%有意に上昇した。
握力の強弱別で解析すると、握力が弱いグループでは、BMIが4年間に5%増加すると6年後の腰痛の発症リスクは17%も上昇。一方、握力が強いグループでは、BMIが5%増えようが25%増えようが、特に腰痛リスクとの関係は認められなかった。
一方、BMIが4年間に10%減少した場合、6年後の腰痛の発症リスクは18%低下する。ただし、「やせ効果」は次第に頭打ちになるようで、BMIが10%を超えて減少したとしても、腰痛リスクは大幅には低下しなかった。
研究者は「握力が弱い人はBMI増加による腰痛リスクが顕著で、肥満の予防や解消などの対策が必要」とし、「肥満者は10%のBMI低下が目安」としている。
ちなみに、日本の50代男性の平均握力は45キログラム、女性は27キログラムだ。BMI25以上で握力が平均値より低い方は、BMI10%低下で将来の腰痛リスクを回避しよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)