中国共産党大会が閉幕し、習近平政権3期目が始まった。習政権の新しい布陣や目指す政策が世界経済に及ぼす影響は大きい。習政権の動向が今後の商品市況に与えるリスクシナリオを読み解く。(マーケット・リスク・アドバイザリー代表 新村直弘)
経済ブレーンの実力は未知数
景気の先行きは不透明
世界第2位の経済大国である中国の動向は、世界経済の行方を大きく左右するといっても過言ではない。その動向が注目された中国共産党大会がこのほど閉幕し、いよいよ習近平政権が3期目に突入した。
とりわけ筆者が注目したのは、新たな習近平政権の布陣と台湾への軍事侵攻の二点だ。これらが今後の商品市況に与えるリスクシナリオを考えてみたい。
まずは習近平国家主席が固めた中国共産党の新・最高指導部体制だ。多くのチャイナ・ウオッチャーの予想に反して習氏は党執行部を全て習派で独占し、実質的な独裁体制を整えた。
習氏はこれまで政敵を腐敗撲滅キャンペーンと称して次々と失脚させて現在の地位を固めてきた。中国の歴史上多くのトップがそうであったように、今回の人事は自身の周りを腹心で固めておかないと不安ということの表れではないだろうか。
または、中国経済が外部から見る以上に厳しい状況にあり、習氏への求心力を高めなければこの難局を乗り切れないかもしれない、との共産党の総意だった可能性もある。
経済政策に関連した人事では、そのまま留任とみられた経済通の李克強首相は引退を余儀なくされ、後任には習氏の側近である李強氏が就任する見通しだ。
通常、首相ポストは副首相経験者が就くのだが、今回は中央政府での実務経験がない李強氏の実力は未知数。また、習主席の経済ブレーンである劉鶴氏の後任とされる何立峰国家発展改革委員会主任の実力も未知数といえる。
経済を無視して支配体制を維持することは困難であることから、来年以降も経済維持のためにさまざまな対策を打ってくると思われる。
ただし、経済政策を担う後任の実力が未知数であるため、先行きの不透明感は強まっている。特に景気に連動しやすい工業金属や原油価格の押し下げ要因となるだろう。