ステップ3では、仕事をする上で何を大事にしたいかを聞く。「成長したい、貢献したい、迷惑をかけないなど、思いつくことをいくつか教えてもらってもいい?」と聞けば、誰でも答えやすくなる。つづいて、その中でベスト1を選んでもらい、その背景を教えてもらう。それこそ部下の「やりたいこと」だ。

 背景を聞くことで、本人すら気づかなかった等身大の願望が見つかるとしたら、これほど素晴らしいことはない。

◇ミスばかりする部下

 いつもミスをする部下がいて、いくら注意しても減らない。こうした状況も上司の声かけで解決が可能だ。

 ミスをしがちな部下は3つのタイプに分かれる。(1)インプットにバグがある、(2)スループットにバグがある、(3)アウトプットにバグがある、の3つだ。(1)のタイプは話を聞いていても抜け漏れがある。(2)のタイプは自分勝手な解釈を加える。そして(3)のタイプはスキル不足や忙しさが原因で、わかっていてもうまくできない状況にいる。

 どのタイプであっても、「念のために、やることを復唱してもらっていい?」と確認することで、問題を解消できる。復唱によって(1)のインプットのバグが回避でき、(2)の解釈の調整もできる。もし部下が(3)のタイプなら、「不安な点はない?」と追加で確認すると、アウトプットの問題も解消できる。長々と説教するのではなく、問いで原因を診断して、自分で対策を考えてもらう。それがミスをなくす指導だ。

◆部下の悩みを「聞く」だけで解決する
◇適当に聞くくらいがちょうどいい

 聞くことの重要性を理解すると、自分が「聞き上手」かどうかが気になるだろう。それをチェックするには、アメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱した「ロジャーズの3原則」が役立つ。

 傾聴は次の3つの要素から成る。相手の気持ちに立つ「共感的理解」。自分の価値観で判断しない「無条件の肯定的関心」。そして心と言動が一致する「自己一致」だ。たとえば、無愛想な部下に対しても、マイナスの感情を抱かず、素直に話を聞くことができるだろうか。これらのチェックに当てはまれば当てはまるほど聞き上手だといえる。