まずは心を開いてくれないタイプの部下にどう声をかけるかだ。大事なのは、聞き方を変えることである。無理に心を開いてもらおうと思わないことが得策だ。とっておきのフレーズは、「あるとすれば、ぜひ教えてもらえませんか?」である。これは「as・ifクエスチョン」という技法で、相手の心の扉を開くカギとなる。

上司「このレポートを今週中にお願いしても大丈夫?」

部下「はい。やっておきます」

上司「もしあるとすれば、何か気になることはある?」

部下「どうでしょう」

上司「あるとすれば、どう?どんなことでもいいので」

部下「言っても仕方ないのですが、このレポートって本当に必要でしょうか」

 このフレーズをクッション言葉として挟むことで、本人が「言うほどのことではない」と思っていることを聞きやすくなる。回数を重ねると、親近感を覚える効果が働くため、ほとんどの場合うまくいく。

「あるとすれば」という言葉で、相手の声にならない声に関心を寄せて聞き尽くすことで、信頼関係が生まれていく。相手が本音を話してくれないとしたら、それは相手の問題ではなく、プロセスの問題なのだ。

◇やりたいことがない部下

 部下のやる気を引き出そうとしても、やりたいことがわからない状態の部下は多い。上司が関わり方を変えれば、部下はやりたいことに気づきやすくなる。具体的には、次の3つのステップで尋ねるとよい。

 ステップ1は「たとえば将来はこんな生活をしていたい、というのはある?」や「いずれこんな役割を担いたい、というものはある?」だ。最初は「わからない」という返答が多いだろう。

 ステップ2では「今の仕事で、やってみたいことはあるか?」と聞く。それでも「わからない」と言われたら次のステップに移る。