トランプ氏返り咲きの見込みが下がれば
「円高」に転じやすくなる

 さて、このトランプ氏の大統領選挙での返り咲きの見込みが低くなったことは、実は私たち日本人の生活にプラスの影響を与えるかもしれません。日本の物価上昇の大きな原因の一つである円安がここで止まって、うまく進めば来年中には為替レートが大きく元に戻る円高の可能性が出てきたのです。

 そもそも今、私たちの家計を悩ませている円安は、日米の政治がもたらした人災的な経済現象です。電気代がびっくりするほど高くなったり、パスタや牛肉が値上がりするなど私たちの生活を脅かしているこの円安値上げ現象が、トランプ氏の勢力低下で風向きが変わりそうなのです。

 私は未来予測を専門にしているのですが、会社名にちなんで「百円コンサルティング」という100円の予測リポートを毎月出しています。9月末に出した予測では「円安不況のピークは12月で、来年は円安が収まる」と予測しました。その予測を10月末のリポートでは一歩踏み込む形で修正して「早ければ11月に1ドル=130円台もありうる」と書いたのですが、その予測通り11月11日に円は138円台を記録しました。

 予測が当たったのは、円安が人為的に起こされているからです。人為的要因は予測しやすいのです。このことは今回のトランプ神話崩壊と関係しています。それを説明しましょう。

 今起きている値上げラッシュのうち、原油高のきっかけはロシアのウクライナ侵攻、小麦高の原因はウクライナも関係しますが、コロナ禍の影響も加わります。そして、円安はそれらが引き起こしたアメリカの高レベルのインフレが原因で起きています。

 この春、アメリカのバイデン大統領が、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長と会談しました。一応、立場上、ふたりは独立した権力者なのですが、この会談、事実上バイデン大統領がパウエル議長を呼びつけて、「インフレをなんとかしろ」と圧力をかけたものでした。アメリカのインフレが前年比で8%台を超えて、市民からの不満が高まっていたからです。