「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】脳の健康を守るには運動が効くけれど…もっと手軽で効果的な対策があるイラスト:chichols

認知症リスクを下げるため
下半身の筋肉をつけよう

【前回】からの続き では、認知症を防ぐために、低体温をどう避けたらいいのでしょうか? 体温をつくり出しているのは、主に「筋肉」です。筋肉は運動やミルキング・アクションだけで活躍しているわけではないのです。

じっとしているときでも行われている、生きるために必要な活動を担うためのエネルギー消費を「基礎代謝」といいます。基礎代謝のうち、筋肉は20%前後を占めています。その大半は、体温を保つために使われているのです。

これを踏まえると、低体温による認知症のリスクを軽減したいなら、筋トレで筋肉を刺激して増やしたほうがいいことがわかります。なかでも目を向けたいのは、「下半身」です。すでに触れたように、筋肉の3分の2は下半身に集まっているうえに、筋肉は下半身から衰えやすいからです。

運動が難しいなら
浴槽入浴で体温を上げればいい

とはいっても、筋トレなどの運動を続けるのは、なかなか難しいでしょう。ならば、せめて心がけてほしいのは、入浴時にシャワーだけで済ませるのではなく、湯船につかる「浴槽入浴」をすることです。浴槽入浴なら、一時的とはいえ、体温を上げることが期待できます。また、温熱と水圧のダブル効果で血液循環もよくなり、脳の血流量もアップするでしょう。

体温を上げて血液循環を促す浴槽入浴のコツは、湯温42度以上の熱すぎるお湯に我慢して入らないこと。熱めのお湯に入ったほうが体温は上がりそうに思えるかもしれませんが、浴槽入浴してから体温が上がるまでには、5分以上かかります。ところが、熱いお湯にはそんなに長く入っていられないので、体温が上がる前に入浴を終えてしまうのです。

副交感神経を優位にする
最適なお風呂の温度とは?

それでは体温を上げるどころか、湯冷めを招きかねません。しかも、熱いお湯は刺激が強すぎるため、緊張時に働く交感神経が優位になりやすく、それによって血管が縮み、血圧が上がる恐れもあります。湯温41度以下のぬるめのお湯なら、ストレスなく長湯ができます。

5~10分ほど入っているうちに体温が上がり、じわじわと汗をかくはず。ぬるめのお湯だとリラックスできて副交感神経が優位になりやすく、血管が開き血圧も下がるでしょう。額に汗をかいたら、湯船から出るいいタイミングです。

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)