なぜこのような質問をしたかというと、「自分の意見を言えない」とカウンセリングに訪れる方のほとんどが「自分の意見を持っていて、私に意見を伝えられている」現状を目の当たりにしているからです。
「意見を言えない」と悩んでいる人のほとんどが、自分の意見を持っていて、自分の意見を言える人たちです。
「意見を言っても大丈夫そうな相手」と「環境」という条件がそろえば、意見が言える人たちなのです。
「意見を伝える方法」を本やネットで勉強して、自分なりに試行錯誤してきた人もたくさんいます。
自分でいろいろ試しても「なかなかうまくいかない」「みんなのように意見を言えない」と思い悩み、最終的に相談に訪れます。
知識やスキルを身に着けても「意見を言えない」のは、その人の努力が足りないせいでしょうか? 勉強が足りないからでしょうか?
……いいえ、違います。
実は「意見を言わないほうがいい」という思いが心の奥底にあると、意見を言うためのスキルをいくら身に着けても「言えない」ことがあるのです。言おうとすると、無意識にブレーキがかかってしまいます。
この「意見を言わないほうがいい」という思い込みのカギを握るのが、過去の親子関係です。
「言っても無駄…」と思う心理
自分の意見を伝えた時に、「お母さんはこっちがいいと思う」「あなたにはこっちのほうが合う」と親の意見を押し付けられることはありませんでしたか?
このような経験が繰り返されると、次第に「意見を言っても無駄だ」「言ってもどうせ、相手の思い通りに動かなければいけない」とあきらめるようになります。
自分の意見を伝えた時に、「それはいいね!」「いいと思うよ」と肯定された回数と、「それはおかしい」「そんなんじゃ甘い」「あなたには無理」と否定された回数では、どちらが多いでしょうか?
否定された回数が圧倒的に多い場合、「意見を言わないほうが傷つかない」と脳にインプットされます。
否定されて傷ついた過去が影響して、次第に「意見を言うこと」さえやめてしまうのです。意見を言わなければ、そもそも傷つかなくてすみますから。
自由に意見を言うためには、「意見を言っても大丈夫!」と思える環境が必要です。
親が忙しかった、両親が不仲だった、兄弟姉妹のことで親が手いっぱいだった、親がいつも不機嫌だったなど、そもそも「自分の意見を伝えられる状況ではなかった」という人もいるでしょう。
自分の意見を言って相手を悲しませたり、怒らせたり、嫌われたりするくらいなら、「自分の意見を我慢したほうがマシ」と我慢することもあります。
家族を想う優しい気持ちをもつ子どもほど、「そうまでして自分の意見を言うメリット」を感じられません。
このように過去の親子関係の在り方が影響して、「自分の意見を言わない」を無意識に選択していることがあるのです。
自由に意見を言えるようになるには…
意見を言えない自分をいくら責めても、意見を言えるようにはなりません。
意見を言えないのは、あなたの性格のせいでもなければ、あなたの努力が足りないせいでもないからです。
まずは意見を「言えない」のか「言わない」のかについて、考えてみてください。
あなたが意見を言えないのは「相手」の問題だったり、意見を言える「環境」ではなかったりする可能性はないですか?
過去の出来事のせいで無意識に「言わない」を選んでいるのだとしたら、「過去のきっかけ」を探してみましょう。
なぜ言えないのかが分かれば、この先「言うのか」「言わないのか」を選べるようになりますから。
過去の出来事のせいで「意見を言えない」と思い込んでいるだけで、あなたも実は「自分の意見を言える人」なのかもしれませんよ。