下落しはじめた韓国の住宅価格

 世界的な住宅価格の下落によって、韓国の住宅市場が転換点を迎えている。2022年の年初以降、世界的に住宅市場の悪化が鮮明化した。中国では不動産市況の悪化が止まらない。米国では住宅の建設や販売が減少し、価格も下落した。韓国では住宅市場の価格上昇ペースが鈍化し、8月以降は前月比で住宅価格が下落している。

 長期的には、韓国の住宅市場は大きな調整を経験してこなかった。KB国民銀行が公表する住宅価格指数を確認すると、アジア通貨危機の発生後、韓国の住宅価格は小幅に下落した後、2001年頃から上昇が鮮明化した。背景には、韓国経済の急速な輸出競争力の向上があった。

 当時、韓国ではパソコンなどのディスプレーやメモリー半導体、家電、自動車などの産業が急速に成長し、GDP成長率が高まった。政治・経済の中心地であるソウルで住む場所を確保し、より良いチャンスを手に入れようとする人も増えた。加えて、世界経済のグローバル化が加速し、米国を中心に物価の安定と緩やかな経済成長が同時に進んだことも大きかった。こうして韓国の住宅価格は、少しずつ上昇ペースを速めた。リーマンショック後の小幅な調整を挟み、09年4月以降は住宅価格の上昇が再び鮮明となった。

 そして20年以降、世界で新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化すると、住宅価格の上昇ペースはさらに加速した。コロナ禍でデジタル化が加速したことに支えられ、韓国ではサムスン電子やSKハイニックスの半導体事業が急成長した。中国向けを中心に輸出も急増した。世界的な電気自動車(EV)シフトの加速を背景に、LG化学などが車載用バッテリー事業を強化した。

 韓国銀行(中央銀行)はこうした景気回復をサポートするために、低金利政策を続けた。緩やかな景気回復と緩和的な金融政策の継続期待に支えられ、韓国の不動産市場では「マンションの価格上昇は間違いない」といった強気心理が高まった。22年7月末、韓国の住宅価格は過去最高を記録した。