「いい会社」はどこにあるのか──? もちろん「万人にとっていい会社」など存在しない。だからこそ、本当にいい会社に出合うために必要なのは「自分なりの座標軸」である。そんな職場選びに悩む人のための決定版ガイド『「いい会社」はどこにある?』がついに発売された。20年以上にわたり「働く日本の生活者」の“生の声”を取材し、公開情報には出てこない「企業のほんとうの姿」を伝えてきた独立系ニュースサイトMyNewsJapan編集長・渡邉正裕氏の集大成とも言うべき一冊だ。同書のなかから厳選した本文を抜粋・再編集してお送りする。
給料から天引きされたうえに
消費税もとられる「不当な二重課税」
日本では太平洋戦争中の1940年、効率的な戦費調達を目的として、勤労所得に「天引き」制度が導入され、これが現在も続いている。我々は生活に必要な額を、額面ではなく手取り(口座に振り込まれた金額)から支払うため、重要なのは「手取り」だけである。
この「手取り」から、さらにサービスやモノを消費すると、消費税を10%とられる。つまり実質的には、手取りの90%だけが最終手取である。すでに天引きで税金はとられているため、不当な「二重課税」である、という議論がある。
手取りは、ローンの返済に回すこともでき、消費せず貯蓄や運用に回すこともできるため、選択肢は多い。会社選びにおいては、「手取り」をメインとして考えるのが妥当だ。
以下がその一覧表である。
増税&社会保障負担増……
日本人はかなり貧しくなった
前作『若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか』(東洋経済新報社)から15年が経ち、働く者の負担は重くなった。年収700万円だと、手取り540万円→529万円に11万円減った。消費税が倍増したため、最終手取りは、513万円→476万円へと、37万円も減り、我々はずいぶん貧しくなった。
手取り減の原因は、主に厚生年金と健康保険の保険料を引き上げたためであるが、高齢化で社会保障負担は重くなり続けており、今後も上がる可能性が高い。
直近では、雇用保険料が2022年10月から1.35%に引き上げられた(従来は0.9%)。コロナ禍で企業が従業員に支払う休業手当がかさみ、その財源を賄うためだという。こうして給与所得者は、帳尻合わせで、容赦なく天引きされていく。
「もっと働け、もっと国に貢げ」……
日本のヤバすぎる分配政策
下の図からわかるとおり、実に緩やかな累進課税となっており、「ワニの口」の先っぽである年収2000万円だと、消費税を払ったら42.3%(845万円)も、税と社会保障に消えていく。総合商社や大手出版社の管理職クラス、そしてキーエンスの中堅社員以上は、このくらい国に貢献しているわけで、ご苦労様、なのである。
逆に、年収200万円でも53万円(27%)負担し、実際には年収146万円の生活になってしまう。
全員同じ10%で、低所得者ほど消費性向は高い(ぜんぶ消費に回す)ため、《消費税の逆進性インパクト(※3)》が大きすぎるのだ。我が国の「分配」政策は、「弱い」と評価されるべきであろう。
《もっと働いてたくさん稼いで国に貢献せよ、ラクにはさせないぞ》という政府からのメッセージが聞こえてくるかのようだ。
(本記事は『「いい会社」はどこにある?──自分だけの「最高の職場」が見つかる9つの視点』の本文を抜粋して、再編集を加えたものです)