「いい会社」はどこにあるのか──? もちろん「万人にとっていい会社」など存在しない。だからこそ、本当にいい会社に出合うために必要なのは「自分なりの座標軸」である。そんな職場選びに悩む人のための決定版ガイド『「いい会社」はどこにある?』がついに発売された。20年以上にわたり「働く日本の生活者」の“生の声”を取材し、公開情報には出てこない「企業のほんとうの姿」を伝えてきた独立系ニュースサイトMyNewsJapan編集長・渡邉正裕氏の集大成とも言うべき一冊だ。同書のなかから厳選した本文を抜粋・再編集してお送りする(2022年12月30日、筆者注を追加しました)。

【電通、SB、NHK…】「仕事してるフリ」元管理職を量産する“役職定年制”のリアルPhoto: Adobe Stock

「役職定年」は老化と停滞の証

 前回の記事に引き続き、「年齢に関係なく仕事を任されやすい会社」の特徴の1つである「社員の平均年齢の若さ」について、もう少し掘り下げながら見ていくことにしよう。

 ※参考記事:【10年後にはシニア社員だらけ…】「老化する日本企業」のヤバすぎる実態──NTT東45.2歳、NTTコム44.1歳、富士通43.6歳、三菱商事42.6歳、日立42.3歳、電通40.9歳、読売47.3歳、朝日45.8歳、日経45.1歳

 平均年齢が高い会社では、やっと役職につけたとしても、「役職定年」の年齢が55歳に設定されている企業が多い。「役職定年」(ポストオフ)とは、一定の年齢になって(概ね55歳)出世が止まっていたら、部下を持つライン長ポストから降りて後任に譲り、一兵卒や1人の専門職となる仕組みで、50代が大量に在籍している高齢化企業の証。要注意だ。

 若手にとってはチャンスがあるとも言えるが、実力ではなく年齢で降ろさないといけないくらい、どうしようもなく目詰まりが起きている、ということで、あえてそういった職場を選んで働く理由はない。

 役職定年は、近年の1つの潮流となっているため、制度と運用について、事前に確認するとよい。組織の老化を測定する1つの指標となる。

◎役職定年制を導入している主な大企業
・55歳──ソニー、東芝、損保ジャパン、丸紅、三菱UFJ、ソフトバンク、東京ガス、商工中金、NTTデータ、朝日新聞
・54歳──電通
※花王・三菱商事・NECのように、いったん導入したものの、「年齢だけで職を解くのは成果主義に反する」という至極まっとうな理由から撤廃した会社もある(いずれも取材時点)
【筆者注】筆者による取材時点での情報。東芝は2020年4月、電通は2018年末に役職定年制度を廃止したと主張しているが、その運用実態は不明である(2022/12/30追記)。

 戦後~バブル期までの日本企業に、そのような制度は不要だった。業績が右肩上がりで、組織が拡大し、部課長ポストが増えていたからだ。仕事が増えれば、30代以下の新規採用を増やして対応するため、組織は自然と若返る。

 逆に成長が止まると、新卒採用を減らすため、中高年が余り出す。業務量はすぐに減るが、人のほうはまったく減らない。雇用保障が欧州並みに厳しい日本では、解雇ができないためである。