「人と会わない12月」は
アパレル・化粧品需要に大打撃

 2番目のリスク要因として、「人と会う頻度がとにかく減ったこと」です。今年の冬商戦ではそもそもコロナの第8波で人と会う機会が増えないという要因もありますが、より怖いのはここでもコロナ禍で生まれた新しい生活様式の影響です。

 私自身の生活を振り返るとコロナ以降、仕事で外出する頻度も変わりましたし、知人と会う頻度も減りました。具体的には、ちょっとした知人と会う機会はまったくなくなりました。理由がなくとも普通に人と会っていた頃の生活様式ではなくなったのです。親しい友人とだけ「久しぶりだから会おうか」といった具合です。

 実際、19年までは毎週3~4回の会食が入っていて、そこにかなりの散財をしていました。ところが最近では他人との会食は主にランチタイム中心です。GoToイート東京の食事券の2万円分など以前なら1回の食事で使い果たしていたところが、今では何回にも分けて使用するような状況です。

 これが仮に国民全体に波及しているとすると、先ほどの三越伊勢丹の販売データの中で婦人服・雑貨や化粧品の売り上げ構成比が減っていることと話がつながります。

 なにしろ人と会わないのであれば、年末商戦でも洋服や化粧品を買い替える必要はありません。人と出会う機会がスマホの中のSNSに限られてきたから、プチプラと呼ばれる安価でかわいい化粧品や小物が流行するわけです。つまり私たちが買いたいものの目標自体が、コロナ禍を通じて変わりつつあるわけです。

半導体不足と節電要請で
家電需要は冷え込む

 そして3番目に気になることが、この冬の半導体不足と節電要請です。最近、私の両親の家の給湯器が壊れてシャワーが使えなくなったのですが、社会問題になっている通り、代わりの商品が入荷するまで4カ月待ちだと言われてしまいました。

 そもそも需要がある欲しい商品が入荷してこない。これでは機会損失になってしまうわけですが、それが家電製品全般と自動車の年末需要に悪影響を与えています。

 さらに言えば、この冬に政府から節電要請がかかってきます。本当は節電であればエコ機能の高い新商品の家電に買い替えたほうがいいのですが、消費者心理的には逆で、電気代を節約するのであれば大きな画面のテレビを買ったり、大きな冷蔵庫に買い替えようという消費意欲は冷めてしまいます。

 節電要請は我が国の電力供給量の不足から来ているので、その意味で供給量不足は構造的かつ長期的なものです。だとすればこの問題も、日本人としての新しい生活様式の一要素と言えるかもしれません。

 そう考えると、この年末商戦とクリスマス商戦に影を落とすことになるかもしれない要素の共通点は「新しい生活様式のリスクだ」とまとめることができるのではないでしょうか。

 アフターコロナに向けての経済回復に期待したいところではあるのですが、不況から脱せられない原因は、意外とわたしたちの新しい生活様式にあるのかもしれないのです。