「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
身体を動かして
五感を刺激する
【前回】からの続き 自宅で湯船につかるだけでなく、休日に家族や友人を誘って温泉や銭湯に出かけてみるのもよいものです。日本は世界に冠たる温泉大国で、全国には2万8000か所近くの源泉があり、宿泊施設をともなう温泉地は約3000か所もあります。
何を隠そう、私は日本温泉気候物理医学会の認定医で、温泉に関しては一家言あるのです。温泉には、泉質に応じてさまざまな効果があります。硫黄泉や酸性泉ならアトピー性皮膚炎、二酸化炭素泉なら冷え性や自律神経失調症に効くといった具合です。
遠くの温泉より
近くの銭湯
ただし残念ながら、温泉の効能で「認知症に効く」と認められたものはありません。ですが、温泉地まで移動するために身体を動かせば、脳の血流は促進されますし、道中で豊かな自然と触れ合い、各地のグルメを味わって五感を刺激すれば、それも脳の活性化につながります。
仕上げにゆったりお湯に入って、温熱と水圧の効果で身体を温めて血液循環を促したら、認知症の予防には100点満点だと思います。温泉に出かけるには、それなりにお金も時間もかかります。その点がネックになるなら、近くの銭湯へ足を運ぶのもいいでしょう。「遠くの温泉より、近くの銭湯」です。
近くのスーパー銭湯で
認知症を予防する
知らない者同士が裸のつき合いをする銭湯は、日本独自の文化です。広い湯船では身体を思い切り伸ばして芯から温め、血流を促進。裸のつき合いでコミュニケーションも弾みます。いずれも、脳の刺激になるでしょう。
近年は、スーパー銭湯が増えています。通常の銭湯よりも規模が大きく、露天風呂やサウナ、ジェットバスなどもあって、レストランを併設しているところも多い娯楽施設です。半日いても飽きない銭湯のテーマパーク的な存在ですから、のんびり過ごしながら認知症を防ぐのも、またよいことです。
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)