国際機関のイメージPhoto:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 バーゼルで金融の国際機関を立ち上げ、15年間経営してきた筆者の経験を振り返り、国際協調の現場がどのように動いているのか、国際ルールがどのように形成されるのかの実例を、これから12回の連載でお伝えする。多数の国から構成される国際組織で国際基準を作り上げていく道のりは、多様性(人種、国籍、文化、性別、年齢等)から世界に価値があるものを生み出す過程といえる。出来上がった国際基準だけを見ても、その背景にある人々の思いや姿は必ずしも見えてこない。しかし、それらを知れば、国際基準の本質をより理解できる助けとなるはずだ。さらに、国際基準がどのような人によってどのように作られていくかの過程を描くことを通じて、日本人や日本の組織がさまざまな多様性を受け入れ、創造や発展を目指す上での一つの示唆を提供できればと思う。

 初回となる今回は、国際基準を作る国際機関はどのようにして誕生するのかについて、保険監督者国際機構(IAIS=International Association of Insurance Supervisors)の創成期を見ることによって解き明かしたい。

IAISの誕生

 国際機関が誕生するうねりは、まず意を共にする数人の熱い議論から始まる。1カ国だけでは解決できない何らかの共通課題があり、その課題をどうにか解決しようと同志が集まり議論が始まる。その同志の間で育まれた解決への熱意が昇華して理念や組織目的となり、それが他の多くの仲間にも共感を持って受け入れられることで、組織が生まれる。

 しかし、それだけでは足りない。組織化のためには資源(リソース)が不可欠だ。活動が安定化するためには、資源と共に活動計画も重要である。それらがそろって初めて国際機関ができる。