Apple Carのイメージ Photo:PixabayApple Carのイメージ Photo:Pixabay

アップルが公然の秘密として取り組む自動運転EV(電気自動車)の開発。「プロジェクト・タイタン」と呼ばれるこの取り組みは、野心的であるがゆえに乗り越えるべき壁が多く、実現に至るロードマップの修正を余儀なくされてきた。自動運転車は、AIや通信、半導体などのデジタル技術の集大成である一方、実際の走行を担うメカニズムの構築には、まったく異なるアナログ的な知見や、生体センサーともいえるテストドライバーのような存在も求められる。そのため、手慣れた電子機器のようにはプロジェクトを進めることができていないのだろう。Apple Carはいつ頃登場し、どんなものになるのか?ここで改めてうわさを整理するとともに、アップルの狙いを考察し、まとめておきたい。(テクノロジーライター 大谷和利)

Apple Car、遅れても高まる期待。
「発売されたら購入を検討する」は26%

 近年、アップルが新規分野に参入するときのネーミングルールは、Apple TVやApple Watchのように「Apple+ジャンル名」となっている。HomePodは、すでに音楽プレーヤー系の自社製品として大ヒット作のiPodが存在したので、その家庭版という意味合いもあって、Apple Speakerとはしなかったのだろう。

「Apple+ジャンル名」という名付け方には、「それらの分野で既存のプレーヤーたちが築いてきた常識や定石的な作り方を、アップル流のやり方で覆す」という意気込みや決意が感じられる。それを自動車分野に当てはめればApple Carとなるわけで、(あまりにストレートな名称ではあるが)ここでも便宜上、そう呼ぶことにする。

 Apple Carを開発するプロジェクト・タイタンに関する情報は、アップルならではの鉄のカーテンに遮られて、同社が公式に認めたものは何一つ存在していない状態だ。しかし、最新リークによれば、2025年の発表予定が1年ずれ込み、2026年になったとされている。先日ソニーとホンダが新世代EVの開発と販売のために共同設立したソニー・ホンダモビリティ株式会社の最初の製品のデリバリー開始も2026年の予定であり、その程度の遅れであれば、現実にはさほど影響はないだろう。

 アップルには強力なブランド力がある。まだどのようなデザインでどういうカテゴリーに属するクルマかも明らかになっていないにもかかわらず、「もし発売されたら購入を検討する」という消費者がかなりの数に上っているのだ。たとえば、調査会社のストラテジック・ビジョンが20万人の新車オーナーを対象に実施したサーベイによれば26%、約4分の1の人がそのように回答したという。

 あくまでも「検討する」なので、実際の判断は現物を見てからということになろうが、「これまで自動車作りの実績がない企業の、未発表の製品」に対して、それだけ関心が寄せられていることは驚異的だ。調査対象となった新車オーナーの中でも、特にテスラユーザーの半数以上は「間違いなく検討する」としており、この点は他のEVメーカーにとっても聞き捨てならない事実である。