「毎日を丁寧に生きること」で視野が広くなる
――なるほど。では、何かを達成するためだけでなく、毎日何かしら楽しいことに目線を向けるということでしょうか。
川野:そうですね。それができれば理想的なのかもしれませんが、そうはいっても私たちの人生は楽しいことばかりではありません。
そこでまずは、「毎日を丁寧に生きること」をおすすめしています。
そうすると自分という存在を大局的に見れるようになるからです。
チョン・ドオン先生もこの本の中に書いておられますが、思いつめてしまうと、「視野狭窄(心理的視野狭窄)」をきたしてしまうんです。
つまり、自分の一部分だけを見て「行きづまった」と考えてしまう。
でも少し広い視野で、上のほうから自分を見下ろしてみると、必ずしもそうではなかったと気づけたりします。
「ヘリコプター・ビューイング」とも呼ばれる、こうした俯瞰的な自己洞察は、自分の周りにはいろいろな楽しみの種があるのだと気づくきっかけになるでしょう。
自分の「ネガティブ眼鏡」に気づく
――視野が狭くなると、楽しいことが見つけられなくなってきますよね。
川野:そうなんです。認知行動療法の分野ではこのような視野狭窄の状態を「ネガティブ眼鏡」と呼んだりもしますが、ネガティブな物事だけが際立って見える眼鏡をかけているような状態になってしまう。
では、どうやったらそんな眼鏡を手離せるかといえば、「自分がネガティブな眼鏡をかけている」ことに気づくことなんです。
ネガティブな眼鏡で見ているのか、ポジティブな眼鏡で見ているのか、自分自身の認知(物事に対する見方・捉え方)の傾向を自覚しておくということです。
――同じことでもネガティブに見るか、ポジティブに見るかで世界は異なって見えそうですね。
川野:はい。たとえば、ウクライナとロシアの戦争のニュースを見たとしても、自分にはどんな災難がふりかかるんだろうと恐怖と不安でいっぱいになってしまう人がいます。
一方で、海外で戦争が起きているならば、それを解決するために国連で働きたい、そのためにはまず英語を勉強しようと奮起する人もいるわけです。
同じ事象でも、どのように受けとめるかは、ネガティブ眼鏡をかけているかポジティブ眼鏡をかけているのかのちがいです。