世界は「受けとめ方次第」で一変する
――「目標が達成できない」という場合もネガティブ眼鏡かポジティブ眼鏡かによって受けとめ方も異なるのでしょうか。
川野:はい。たとえば、同じ目標を与えられていたとしても、「会社の目標は絶対だ。クリアできなければ、自分には価値がない」と考えるのか、「会社の目標は絶対ではない。時にはクリアできないことがあって、自分が努力していることを認めてあげたい」と考えるのかで、世界はまったく別のものに見えるでしょう。
――どうして人によって物事の捉え方がここまで異なるのでしょうか。
川野:認知の偏り、つまり物事に対する捉え方が成立する背景には、幼い頃から現在に至るまでの様々な経験が関与しています。
こうした偏りは、無自覚に形成される性質のものであることから、「アンコンシャス・バイアス」とも呼ばれています。
「アンコンシャス」とは「無意識」の意、「バイアス」とは「心の偏り」を意味します。
そんな誰もがもっているアンコンシャス・バイアスを、自ら振り返ることを通してこんなふうに自分のバイアスを振り返ってみるのが認知行動療法です。
認知行動療法を行うことによって、自分自身を見つめるきっかけになり、精神的なつらさもだいぶ軽減していきます。
ただ、自分自身の生きづらさを生む行動パターンに気づいても、それを修正できない場合、さらに深掘りして自分を見つめる必要が出てきます。
「どういう経緯でネガティブ眼鏡をかけることになったのか」を必ず向き合わなければいけないときがくる。
そうするとこのチョン・ドオン先生の精神分析の分野になってくるわけです。
自分自身の生きづらさのパターンに気づいている人にとって、この本はとても役に立つと思います。
精神科・心療内科医/臨済宗建長寺派林香寺住職
精神保健指定医・日本精神神経学会認定精神科専門医・医師会認定産業医。
1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行。2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。現在寺務の傍ら都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたっている。
うつ病、不安障害、PTSD、睡眠障害、依存症などに対し、薬物療法や従来の精神療法と並び、禅やマインドフルネスの実践による心理療法を積極的に導入している。またビジネスパーソン、医療従事者、学校教員、子育て世代、シニア世代などを対象に幅広く講演活動を行なっている。
主な著書に『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)、『半分、減らす。「1/2の心がけ」で、人生はもっと良くなる』(三笠書房)、『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)、『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。