「私はなぜこんなに生きづらいんだろう」「なぜあの人はあんなことを言うのだろう」。自分と他人の心について知りたいと思うことはないだろうか。そんな人におすすめなのが、『こころの葛藤はすべて私の味方だ。』だ。著者の精神科医のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。本書は「心の勉強をしたい人が最初に読むべき本」「カウンセリングや癒しの効果がある」「ネガティブな自分まで受け入れられるようになる」などの感想が多数寄せられている。本書の原著である『フロイトの椅子』は韓国の人気女性アイドルグループ・少女時代のソヒョン氏も愛読しているベストセラー。ソヒョン氏は「難しすぎないので、いつもそばに置いて読みながら心をコントロールしています」と推薦の言葉を寄せている。精神科医で禅僧の川野泰周氏も「著者のチョン・ドオンさんのような分析家の先生だったら、誰でも話を聞いてほしいだろうなと思います」と語る。読者に寄り添い、あたかも実際に精神分析を受けているかのように、自分の本心を探り、心の傷を癒すヒントをくれる1冊。今回は川野氏に本書のおすすめポイントを聞いた。
生真面目さが自分を追いつめる
――『こころの葛藤はすべて私の味方だ。』を手に取る方の中には、がんばりすぎて疲弊してしまい、そんな自分の生き方を見つめ直したい、と考えている人も多いようです。
川野泰周(以下、川野):そうですね。がんばりすぎてしまう背景として、日本人特有の勤勉さも一因になっていると思います。
――日本人特有の勤勉さですか。
川野:はい。最近は、従業員のワーク・ライフ・バランス維持のために、「残業はなるべく◯時間以内にしましょう」と働き方改革を掲げる企業が増えてきました。
その試み自体は良いことだと思うのですが、同じ時間内で、今までと同じ仕事量を求められて、さらに残業できないとなると、「今日終わらせなければいけないことができなかった」と不全感を抱えて悩んでしまう人も少なくありません。
――たしかに。会社が消灯になってしまうから、と仕事を家に持ち帰る人もいるようですね。
川野:そうなんです。会社に遠慮して残業を申告せず、サービス残業してしまう、といった人が増えるのは自然なことかもしれません。
そうすると従業員のみなさんは自らの意志で残業していることになるため、会社側は「知りませんよ。私たちは6時に帰るように伝えているのに、この人たちが勝手に働いたんです」というスタンスを取るわけです。
労働時間だけは短縮するよう求めるのに、今まで通りの成果を上げないと評価されないという企業風土は相変わらず残っているのですから、従業員が無理をしてしまうのも不思議はありません。
本当は会社に追いつめられているのに、形的には自分が自分を追いつめている構図になってしまっている。
企業の体質から変えてゆく努力が求められていると思います。