JT「内定者懇親会」のワークに“ツナマル”が登場
企業の規模や業種・業界などによって多少異なるものの、学部生の就職活動は、大学3年の3月にエントリーシートの締め切りがあり、大学4年の4月から6月が本選考のピークとなる。ゴールデンウィークの前後には複数社から内定(内々定)を得る学生もいて、全体の傾向として、内定(内々定)出しの時期が年々早まっている。その結果、入社までの期間が長くなり、内定(内々定)を辞退する学生も増え、「内定の歩留まりが読みにくい」という、採用担当者の悩みが目立ってきている*3 。入社前の不安を払拭し、入社意欲を高めるにはどうすればよいか?――中原ゼミ生が開発した「内定者フォローワークショップ“ツナマル”」では、“内定者同士のつながり”が入社の動機を高め、入社後の対人関係を円滑にし、仕事における個人の成長をもたらすと明示している。
*3 株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース【23卒採用アンケート調査】より
三島 コロナ禍によって、内定者同士や内定者と企業の間の交流が希薄となっているため、「他にどんな内定者がいるのだろう?」「職場はどんな雰囲気だろう?」という不安を持つ学生が多いです。オンラインでは、ノンバーバルな情報や内定者全体の雰囲気がわかりづらいと感じる学生もいます。同期となる仲間がどんな人なのか――それが就職の安心感につながるのは確かなので、入社までの期間では、内定者同士が互いの理解を少しでも深められるような仕掛けを企業側が用意する必要があると思います。私自身、入社1年目の研修が先日あったのですが、「内定者懇親会」で同じグループだった同期の仲間に久しぶりに会えて嬉しかったです。入社後・入社前の段階からお互いを知っている仲間に会うことで、同じ会社で同じ方向を向いて働いているんだなと思え、同期のつながりを感じられました。そのときに感じた喜びは、働くうえでもとても良いモチベーションになっています。23卒生の内定者にも、入社後、同期とのつながりと、それがもたらす喜びやポジティブな力を感じてほしい――そのために、まずは、同期同士の仲を深め、入社に対して前向きな気持ちを持ってもらえるように、「内定者懇親会」の準備を進めました。
2022年9月の平日夕方から開催された、23卒生の「内定者懇親会」――三島さんは、そのメインイベントである「ワーク」として“ツナマル”を選び、参加者を4人ずつのグループに分けた。前述したように、JTは職種別採用だが、ひとつのグループに同じ職種の内定者がまとまらないように配慮したという。
三島 職種別採用だからこそ、入社後は全員が同じ仕事をするとは限りません。しかし、仕事では職種を跨いだ連携が必要になってくる場面が多くあります。私自身、「あの部門に同期のあの子がいてくれたから仕事がスムーズに進んだ。つながりがあってよかった」と思うことが頻繁にあります。だから、この場では職種を超えて「同期」というつながりを構築してほしかったのです。職種ごとにフィルターをかけて関係を深めるのではなく、まずは「JTに2023年4月に入社する仲間たちの集まり」という大きな認識のなかでつながりをつくって、入社後にそのつながりの大切さを感じてくれれば良いなと思います。
ワークショップ“ツナマル”のファシリテート役は外部の専門家に委ねて、三島さんは、時間管理とともに全体の流れを見つつ、オフラインになってしまった学生をケアするといった世話役に回った。あらゆるグループの「(ブレイクアウト)ルーム」を行ったり来たりし、「内定者懇親会」のメインプログラムとなった“ツナマル”の進行を確認していった。
三島 みんながとても楽しそうでした。初対面で、しかもオンラインなので、身振り手振りもよく分からず、細かなニュアンスも伝わりづらいなか、私が体験会で感じたように、最初の「自己開示」パートの効果が大きかったようです。動物の語尾を付けて話すことを恥ずかしがる学生もいましたが、時間がたつにつれて、みんなの会話が弾んでいきましたね。「相互理解」のパートでは、学生同士がすっかり打ち解け、最後には、うまく協力してゲームを解いていました。ワーク後の懇親会で、「ワークショップでは、どのパートがいちばん楽しかったですか?」と、何人かに聞いてみたのですが、「協力ワーク」と答えた学生が多かったです。それは、前段階の「自己開示」と「相互理解」がしっかりなされていたからだと実感しています。