インターンシップの“体感品質”を上げていくこと
企業側は、これまで行ってきたさまざまなインターンシップのプログラムを整理し、見直すことが必要だ。特に、タイプ3のインターンシップをどのように用意するかが課題となる。
福重 タイプ3では5日間以上のプログラムが必要で、危険を伴うような就労現場やコンプライアンスの観点から実際の職場に学生を受け入れられない場合はワークショップ型にならざるをえません。
たとえば、ワークショップ型プログラムの主な構成要素は主に5つあります。初日の午前中に自己紹介などのアイスブレイクを行い、その後、ワークショップのテーマを伝え、2日目ないし3日目にかけてグループごとに取り組んでもらいます。4日目の午後にはプレゼンテーション(発表会)を行い、5日目に先輩社員との座談会、そして、まとめを行います。あるいは、先輩社員との懇談会を2日目と3日目のグループワークの間、4日目のプレゼンの前に入れるという方法もあります。学生自身で考えているグループワークが正しいのかどうかを、先輩に質問し、軌道修正していくというものです。
当然、タイプ3のインターンシップをどのようなプログラムにするかは企業によって異なるだろう。福重さんは、「学生に対し、自社のビジネスモデルを、どれくらい具体的かつ興味深く理解させられるかを工夫すべき」と強調する。
福重 それを、私は「インターンシップの“体感品質”を上げる」と言っています。企業の人事担当者のなかには、「インターンシップを行えば、学生を必ず採れる」「インターンシップを行わないと、良い学生は採れない」と単純に考え、インターンシップを魔法の杖のように扱うケースがありますが、大きな誤解です。
5日間以上のインターンシッププログラムを通して、学生に、「そういうことだったのか」「いろいろ学べてよかった」「前よりもビジネスを深く考えられるようになった」といった手ごたえを与えて、はじめて、自社への興味や関心を高めることができるのです。そのためには、ワークショップ型プログラムであっても、自社のビジネスのリアリティを学生にできるだけ感じさせる必要があります。たとえば、「新規事業を企画する」というテーマであれば、単にビジネスモデルをまとめるだけではなく、いつまでに、誰をどう動かし、コストがどれくらいかかるのかといった点まで落とし込むこと。設定もどれだけ作りこむことができるか、がカギになります。企業情報も社名や数値だけでなく、ロゴ・社是・設立年度・規模・環境・社員数など、登場人物であれば、その人の容姿・年齢・プロフィールなど、細かく設定すればするほど「体感の品質」は上がります。設定した情報は全て出す必要はありませんが設定しておくことでワークの深みは増します。実際の仕事では全ての情報がまとまって目の前に表れることはありません。無数の情報のなかから取捨選択し、仕事は行われます。架空でよいので、「どれだけ具体的に設定することができるか?」でリアリティが増すでしょう。そこまでやれば、学生のなかに、仕事やキャリアをリアルに考えるきっかけが生まれ、企業は、自社への志望動機を参加学生に植え付けられるという効果が出ます。