“24卒採用”に向けたインターンシップで、企業が気をつけたいこと

企業による、来年2023年3月卒業予定者(現在、主に大学4年生)の採用選考が続くなか、2024年3月卒業予定者(現在、主に大学3年生)を対象としたインターンシップが始まる。新卒採用におけるインターンシップの重要性が高まるとともに、コロナ禍によるオンライン化や短縮化など、その形式や内容も変化してきており、インターンシップの方法や運用の巧拙が各企業の採用活動全体に影響を与えかねない――多業種の人事担当者と深くかかわり、インターンシップのプロデュースをはじめ、人材採用から育成までのコンサルティングを手がけている福重敦士さん(株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD首都圏営業局・局長)に話を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

会社説明会とインターンシップの違いは何か?

 24卒生(=2024年3月卒業予定者。現在、主に大学3年生)向けの就活サイトがオープンし、企業・団体によるインターンシップの募集も始まっている。近年は、7割以上の就活生が何らかのかたちのインターンシップに参加しているというデータもある*1 が、コロナ禍ではどのような傾向の変化が見られるのだろうか。

*1 ダイヤモンド・ヒューマンリソース「2022年卒版 採用・就職活動の総括」より

福重 まず挙げられるのが、オンライン化と短縮化です。コロナ禍で社会全体が一気にオンライン化しましたが、企業のインターンシップも同じです。リアル対面であれば、参加する学生の注意力や集中力の持続を期待できますが、オンラインではなかなか難しく、数時間から半日程度の短いプログラムが多くなりました。内容は、企業が参加学生に特定の課題を与える“ワークショップ形式”が主流になっています。

 この4月に、経団連と大学側で構成される「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が発表した報告書では、インターンシップに括られるものを4つのタイプに分類しています。大学入試に向けて開くオープン・キャンパスの企業版のようなもので、学生が「企業・業界・仕事を具体的に知る」のが目的のものを「オープン・カンパニー」(タイプ1)とし、主に大学1~2年生を対象として、「自らのキャリア(職業観・就業観)を考える」のが目的のものを「キャリア教育」(タイプ2)としています。この分類に基づけば、コロナ禍でのインターンシップは「オープン・カンパニー」が増えたということになります。

 24卒生(2024年3月卒業予定者。現在、主に大学3年生)以降は、ルール変更により、タイプ3とタイプ4の企業がインターンシップ募集時に「産学協議会基準準拠マーク」を記載できるとしているので、大手企業を中心に「5日間以上」のインターンは増えると予測しています。こうしたインターンシップによる企業のブランディングは日数だけの問題ではありません。(タイプ3では)その半分以上を職場などでの就業体験にあてなければならないのです。また、職場の社員が学生を指導し、インターン終了後にフィードバックすることも条件となっており、これは企業にとっても負担になるでしょう。インターンシップによる企業のブランディングの評価がプログラムだけではなく、フィードバックの「質」でも問われるようになります。企業が負担を嫌うことで、手軽なワンデーイベントのようなタイプ1(「オープン・カンパニー」)も減らないと予測しています。

 本来、インターンシップは就業体験・職場体験の場ですが、コロナ禍のオンライン開催ではその実現が難しく、 “インターンシップ”と呼ぶかどうかは意見が分かれるでしょう。一方で、オンライン化と短縮化によって、プログラムに参加できる学生が大幅に増え、門戸は広がっています。企業側も学生側も、“インターンシップ”という名称の是非はさておき、その機会をどのように活用するかが重要だと思います。

 コロナ禍でオンライン化・短期化したインターンシップだが、企業の新卒採用活動において、現在どのように位置づけられているのだろう。

福重 インターンシップは、企業が就活を行っていく学生と初めてダイレクトに接する機会でしょう。インターンシップは、「学生に自社の存在を知ってもらい、どのようなビジネスを行っているのかの理解を促す」という意味で、とても重要な機会になります。「会社説明会と何が違うのか?」と思われる方もいるかもしれません……たしかに、どちらも、就活を行う学生を対象にしてはいるものの、インターンシップと会社説明会は大きく異なります。コロナ禍では、会社説明会もオンライン化が進み、30分から1時間ほどのものが多くなり、説明を分かりやすくするために「動画を使う」といった工夫もありますが、基本的には企業側から一方的に伝えるスタイルであり、学生との双方向のやりとりは少ないです。

 それに対し、インターンシップは、企業の募集に対して学生が積極的に手を挙げるものであり、実際のプログラムでは、最低でも数時間のやりとりが企業と学生の間で行われます。企業は、自社の一方的な紹介だけではなく、事業内容や社員の様子、社内の雰囲気を学生に知ってもらいながら、学生の考え方や思考も把握できます。学生は、就職活動のスタート地点として、企業との双方向のやりとりをしっかりと記憶に刻んでいきます。