“就職人気企業ランキング”の変遷で知る、学生の動きと採用活動のヒント

毎年、新聞系のメディアや人材紹介会社によって“就職人気企業ランキング”が発表されている。なかでも、株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースの“就職人気企業ランキング”は、文系男子・理系男子は1978年から、文系女子・理系女子は1999年から続き、最も長い歴史を持っている。同社・経営企画室長の高村太朗さんへのインタビューを通して、ランキングの変遷から浮かび上がる学生の動向と採用活動のヒントをまとめてみた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

大幅に入れ替わったランキング上位企業の顔ぶれ

 ダイヤモンド・ヒューマンリソースが文系男子・理系男子の学生(就職活動中の大学3年生と大学院生)を調査対象に“就職人気企業ランキング”を初めて発表したのは1978年――新東京国際空港(現・成田国際空港)が開港し、日中平和友好条約調印などがあった、いまから44年も前のことだ。また、文系女子・理系女子の学生(就職活動中の大学3年生と大学院生)を調査対象にしたランキングは1999年からで、こちらも23年という長い歴史がある。

 1978年当時のトップ10と最新調査である2022年のトップ10を比較してみると、文系男子・女子と理系女子は同じ企業のランクインもあるが、理系男子はすべての企業が入れ替わっていて、時代の変化を強く感じさせる。

高村  時代によって、ランキング上位の企業に変化があるのは当然として、文系男子では10位以下を含め、大手企業・有名企業・財閥系企業が長年安定しています。

 一方、理系男子は日本の産業構造の変化が如実に反映されています。かつては、鉄鋼・重工業・電機・自動車などの重厚長大企業がトップ50位までに多く並んでいました。それが、最近は理系であっても商社や金融が上位にあがっています。

 過去にランキングで1位になった企業の社数は、1978年からの44年間で、文系男子も理系男子も9社。1999年からの23年間で、文系女子が7社、理系女子が10社と、意外に少ない。つまり、同じ企業が1位になっていることが多いのだ。

高村 改めて、文系男子のランキングの変遷を見ると、総合商社の強さが際立っています。トップ10に入らなかったこともありますが、ほぼ一貫して上位にランクインしています。

 以前は、金融系企業も上位に多くランクインしていました。たとえば、都銀は最盛期に15行あり、80年代後半のバブル景気の頃は文系男子トップ10の半分を占めたこともあります。しかし、その後は再編が進み、いまや、3メガ体制に集約されました。以前は1行で1000人以上の新卒を採用していたこともありますが、店舗の統廃合やRPA等の導入による業務効率化により、2023年春の新卒採用計画数はメガバンク3行合わせても1100人ほどです。隔世の感がありますね。

 理系は、かつては電機メーカーが人気でした。バブル期には理系男子のトップ10の半分以上を占めたこともあります。現在のソニーを電機メーカーと呼ぶのは微妙ですが、ソニーは14年連続で1位でした。ただ、2000年代に入ると、吸収合併や業績低迷で、電機メーカー業界全体の方向性が見えづらくなっていることが影響して、全体的には低迷しています。

“就職人気企業ランキング”の変遷で知る、学生の動きと採用活動のヒント

高村太朗 Taro TAKAMURA

株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース
経営企画室 室長

1998年、株式会社ダイヤモンド・ビッグ社入社。法人営業として、首都圏と大阪で大手企業を中心に新卒採用支援や人材開発支援を担当。「ダイヤモンド就活ナビ」編集長、営業企画室長を経て、現職。「ダイヤモンド就職人気企業ランキング」「採用・就職活動の総括」をはじめ、新卒採用マーケットに関する調査・分析に携わっている。