インターンシップ後の“フィードバック”の重要性

 インターンシップの効果を左右するもうひとつの要素として、福重さんは、“フードバック”の重要性を指摘する。産学協議会の定義でも、タイプ3においては“インターンシップ修了後に、学生を指導した社員がフィードバックを行うこと”を条件としている。

福重 インターンシップ中に、学生は何かしらのアウトプットを行い、終了後にその活動に対するフィードバックを求めています。そして、自分の活動やアウトプットに対するフィードバックの「質」でその企業を判断するようになります。ただ単に、「よかったよ」「素晴らしかったね」では自社への興味や関心を高めることはできません。プログラムのなかで、「あなたは、あの時に、こう動いていたね。チームワークを大切にするタイプですね」などと、仕事のなかで参加学生がどう動くタイプか、であったり、「あなたの□□のところは強みだと思うけど、△△の点はまだ改善の余地があると思う。それには……」「あなたのキャリアを考えたとき、我が社であれば、○○の業務で活躍して経験を積めるはず」といった、それぞれの学生の特性に合わせた具体的なアドバイスや提案ができれば、学生の心に響くでしょう。多くの学生は基本的に真面目であり、自分の考えや行動に対する評価を求めています。

25卒採用“インターンシップ改革”で、人事担当者が知っておきたいこと

 ここで注意したいのは、フィードバックを行うのは、インターンシップを統括する人事担当者ではなく、“先輩社員(学生を指導した社員)”ということだ。“先輩社員(学生を指導した社員)”は、通常業務と並行してインターンシップに参加し、その後、学生へのフィードバックを行う――これはかなりの負担になると思うが……。

福重 そもそも、きちんとしたフィードバックを行うには、インターンシップの段階から、先輩社員が主体的にかかわっていなければなりません。重要なのは、その会社に“人を育てる風土や文化”があるかどうかです。自分が若手社員だった頃に、先輩や上司から仕事のフィードバックやアドバイスをきちんと受けていた経験があれば、学生に対しても、自然と同じことができるはずです。そうでなければ、インターンシップのフィードバックの実施を人事部が先輩社員に指示してもうまくいきません。

 たとえば、私が担当していた企業では、若手社員への教育方針として、「全社員先生化」を掲げていました。年次が上の社員には何を聞いてもいいし、聞かれたほうは必ず教えてあげなければならないというものです。新入社員には「わからないことがあれば、誰に聞いてもいい」ということを繰り返し伝えているそうです。そうした風土があれば、今回の“インターンシップ改革”にも難なく対応できるでしょう。

 自社に“人を育てる風土や文化”が乏しく、先輩社員による、学生へのフィードバックが難しいようなら、いまからでも遅くないので、“人を育てる風土や文化”の醸成に取り組むべきです。それが、昨今で盛んに言われるようになっている「人的資本経営」にもつながっていくはずです。