「ノウハウ情報」の場合
本当にあなたに役立つか?

 ノウハウに関する情報も検討してみよう。

【ノウハウ情報の例】
 プロの年金運用の世界では「コア・サテライト運用」がよく用いられる。インデックス運用を中心に、アクティブ運用を付加する運用方法だ。個人投資家は、2024年から導入される新NISA(少額投資非課税制度)で、プロの運用方法をまねして、積み立て投資部分ではインデックスファンド、成長投資枠では個別株やアクティブファンドに投資したらいい。

 新NISAでは、大きな「成長投資枠」(年間240万円、合計で1200万円)が設けられたので、いかにも流通しそうな運用ノウハウだ。この情報はあなたにとってどのような意味があるだろうか。

 正解を説明しよう。コア・サテライト運用は、確かに年金運用の世界で広く利用されているが、実は概ね無意味で、少しだが有害だ。率直に言って、年金基金と年金コンサルタント、そして運用会社が「余計な仕事」を作って手間をかけている「ビジネスの世界」に、コア・サテライト運用はある。カネを払っているのは年金加入者だ。

 そもそも、インデックス運用が「コア」である理由は、平均的にアクティブ運用よりも成績が良く、加えて相対的に成績のいいアクティブファンドを「事前に」選び出す方法が存在しないからだ。だとすると、比率を引き下げていてもアクティブファンドを選び出して投資することは、余計な手間と手数料をかけて運用パフォーマンスの期待値を下げる行為にすぎない。

 サテライトの存在は、コアがコアである理由と矛盾している。それでも、サテライトを持つ理由は、これがないと年金基金もヒマであるし、基金としてのサービスビジネスにおける(勝手に作った)プロダクトの一部だからだ。

 ちなみに、年金基金の担当者については「運用のプロ」と呼ぶことが慣行になっているし、彼らが実際に運用の仕事から収入を得ていることは間違いないのだが、運用会社の側では、個々の彼らを専門家としての運用のプロだと心から思っているケースはほとんどない。

 本例の情報を判断できるためには、インデックス運用とアクティブ運用との優劣が生じる理由(単なる過去のデータだけではなくて)の理解があることが望ましい。また、「プロの方法をまねすることが正しいとは限らない」「わざわざプロの方法と言っている点が怪しい」といった疑いを持つことができる勘が働くとさらにいい。ただ、率直に言って一般の人には少し難しいかもしれない。プロがやっていると聞くと、立派なことのように思ってしまう。

 しかし、本例に限らず、投資や運用の「方法」に関する誤解はその悪影響が大きい。ダメな方法の罠にははまらないでほしい。