投資の方法に関する誤解を避けるためには、最初から正しい情報に接することが可能だと好都合だ。ところが、そもそも「正しい情報」が何なのかを判断することが、特に最初は難しいという循環論法的な落とし穴に陥りかねない。

 こうした状況を考えると、いわゆる投資教育を提供する側はよくよく慎重でなければならないことが分かる。

 ただし、今回のような情報でも、その真偽は普通の推論の積み重ねで判断できる。投資家のみなさんには、「情報を簡単に信じないでください。プロも疑ってください。論理を一歩一歩積み重ねて、信じていいことをご自分で見分けてください」と申し上げたい。

 筆者は非力ながら、正しいノウハウを伝える努力をしているつもりなのだが、期待ほどの効果が上がっていないのが現実だ。

伝説の投資家の印象的な一言
「マクロ経済の検討は1年に15分」?

 最後に、情報に関連して、筆者の記憶にある印象的なエピソードを一つお伝えしよう。かつて、独立系運用大手フィデリティの旗艦ファンド「マゼラン・ファンド」の好成績で名をはせた投資家、ピーター・リンチ氏の話だ。彼は、ある時「マクロ経済の見通しについては、どのように検討されていますか?」という質問を受けて、「うん。検討しているよ。1年に15分くらいね」と答えたという。

 彼は、企業を深く分析する投資スタイルだったので、マクロ経済の見通しで運用しているわけではないと言いたかったのだろう。だが一方で、マクロ経済の分析情報をファンドの運用にとってプラスに生かすことの難しさも実感していたに違いない。

 景気の見通しや、金融政策の予想など、マクロレベルの投資情報だけでも大量に流通しているが、これらの大半が、「運用を改善する」という目的には役立たない情報だ。「情報を取り逃がしたことで損をする」可能性は、実はごく小さい。「情報に過剰反応して間違える」可能性は案外小さくない。そう思うと、少し気が楽にならないだろうか。

「情報」が投資家のみなさんのストレスにならないことを祈る。