創業9年目で売上300億円と、急成長を遂げている家電メーカー、アンカー・ジャパン。そのトップに立つのは、27歳入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳でアンカー・ジャパンCEOに就任と、自身も猛スピードで変化し続けてきた、猿渡歩(えんど・あゆむ)氏だ。「大企業に入れば一生安泰」という常識が崩れた現代、個人の市場価値を高めるためには「1位にチャレンジする思考法」が必要だと猿渡氏は語る。そんな彼が牽引してきたアンカー・ジャパンの急成長の秘密が詰まった白熱の処女作『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』が大きな話題となっている。そこで本書の発売を記念して、ビジネスパーソン「あるある」全20の悩みを猿渡氏にぶつける特別企画がスタートした。第17回目は、「モチベーションが続く人と続かない人の差」について聞いた。(構成・川代紗生)
「モチベーションが維持できない」悩みの原因は?
──多くの人が抱く、「モチベーションが維持できない」という悩み。仕事への動機づけや、目的意識がわからなくなってしまったときは、どうすればよいと思いますか?
猿渡歩(以下、猿渡):いくつかのパターンが考えられると思います。
一つは、「仕事に関しては」目的意識を持てていないだけ、というパターンです。
ゲームが大好きでずっと続けられるという人、サッカーが好きな人、週末の趣味が楽しみで仕方がない人……。
ただ、今は「やりたい」という気持ちが仕事ではなく別のことに向いているだけ、まだ仕事の目的に出会えていないだけであり、きっかけさえあれば、意欲が一気に変わる可能性があります。
「一瞬の感動体験」がモチベーションの種になる
──たしかに、「仕事に強いモチベーションを持たなくちゃ」と思うからこそ、苦しくなってしまうのかもしれません。
猿渡:好きなものを変えるのは、難しいと思います。
やらされている感がある限り、身が入りません。
「“上司が”やらせてくる仕事」ではなく「“自分が”やりたくてやる仕事」のように、主語が変わるきっかけがあるといいですね。
──何に対しても興味が湧かない場合は、いろいろな経験を積み、自分に合うものを見つけるしかないでしょうか?
猿渡:「一瞬の感動体験」が一生のモチベーションになることもあるため、さまざまな経験を積み、視野を広げるのは大切だと思います。
たとえば、私は趣味でマジックをやっているのですが、「やりたい!」と思ったきっかけは、プロマジシャンの芸を見せてもらった経験でした。
「すごい! こうやって人を楽しませることができるんだ!」
と、その一瞬の感動が心からずっと離れなかったのです。
他にも、親の病気を治してくれたお医者さんとの出会いがきっかけで医者を目指す人や、学生時代に行った海外旅行の楽しさが忘れられず、海外での仕事を目指す人などもいますよね。
大きな挫折や失敗がきっかけになる人もいるかと思います。
私のように、大学受験での不合格の悔しさから、「同世代で1位になりたい!」という強い目的意識を持つようになる人もいるでしょう。
どんな出来事がきっかけになるか、何がモチベーションの種になるかは、いくら考えても予想できません。
なので、今「興味を持てることが何もない」「何に関してもモチベーションが続かない」という人は、「一瞬の感動体験」を探してみるのがいいかもしれません。
忙しすぎる毎日が「目的意識」を曇らせる
──他には、目的意識を見失ってしまうパターンとして、どんなものが考えられるでしょう?
猿渡:忙しくて思考停止している場合も、見失いがちだと思います。
私も気をつけているのですが、目先の仕事を処理したり、トラブルに追われたりすると、どうしてもそこに集中してしまい、時間と労力を奪われます。
その瞬間は仕方ありませんが、合間を見つけて一歩引いて、「今、自分は、本当に歩きたい道を歩いているだろうか?」と考えてみないと、どんどん視野が狭くなってしまいます。
「忙しい」という字が「心を亡くす」と書くように、日々の仕事に追われて余白がなくなると、気持ちの余裕もなくなってしまいます。
未来のために勉強する時間もなくなり、「あれ、自分って何がしたかったんだっけ?」と不安になってしまうのも無理はありません。
──忙しくて思考停止しないために、猿渡さんがされている対策はありますか?
猿渡:メンバーにも相談し、「週1回のノーミーティングデー」という習慣を取り入れて以来、かなり改善されたと感じています。
以前は月曜から金曜まで会議や面接がびっしり入っていたのですが、ノーミーティングデーを取り入れることによって、脳をリラックスさせられるようになりました。
ゆっくりと立ち止まり、自分の目的意識を見つめ直す時間はとても重要です。
本書が、読んでくださった方の「目的意識」と向き合うきっかけになれば幸いです。
(本稿は『1位思考』に掲載されたものをベースに、本には掲載できなかったノウハウを著者インタビューをもとに再構成したものです)