一般公募から「育業」という言葉が選ばれた理由
「育児・介護休業法」の改正*4 など、法整備は進んでいるものの、男性の「育業」取得率が伸び悩んでいるのは、「取りづらい」職場の雰囲気によるところが大きいようだ。東京都産業労働局の調査*5 では、「男性育休の課題」として、男性従業員の38.8%が「職場がそのような雰囲気ではない」と回答している。いったい何が“否定的な雰囲気”をつくり出しているのだろう? “休み”をイメージさせる“育休”という言葉が、休んで楽をするという意味に受け取られる――こうした声に注目した都は、「育休」に変わる愛称を一般公募し、8825件の応募のなかから、昨年2022年6月に「育業」を選出した。
*4 厚生労働省ホームページ「育児・介護休業法について」参照
*5 令和3年度「女性活躍推進法への対応等 企業における男女雇用管理に関する調査/従業員調査」
中島 「育休を取ると周囲に迷惑をかけてしまう」「キャリアが閉ざされてしまう懸念がある」といった声を耳にします。「申し訳ない」という思いのつきまとうネガティブなものではなく、労使双方にとって当然のこと、むしろ、ポジティブなものであるという方向にマインドチェンジしなければいけないと思います。愛称公募のねらいは、その変化のきっかけをつくることです。「育業」という名称には、「育児は24時間のハードワーク」「育児は未来を育む尊い仕事」という多くの応募者の思いが込められています。
愛称の決定から2カ月後に実施したアンケートでは、73.5%の方がこの愛称を「ふさわしいと思う」と回答してくださっているので、一定の支持をいただけたのかなと思っています。その一方で、「名前だけ変えても、実態は変わらないのではないか?」というご意見もあります。都は、育業しやすい環境整備を進める企業への支援も強化していますので、こういった企業への支援の周知についても、担当の産業労働局と協力して進めていきたいと思います。愛称への賛否を含めて議論が深まっていき、社会の変化が加速することを期待しています。