「育休」から「育業」へ――いま、企業経営者や人事担当者に必要な視点とは?

少子化や女性活躍、企業の採用力向上など、さまざまな課題解決に欠かせない施策として期待されているのが、企業・団体で働く人の育児休業(育休)取得率のアップだ。「育児・介護休業法」の改正など、政府はさまざまな推進を続けながら、女性従業員とともに男性の取得率アップ(2025年までに30%達成)を目指している。そうしたなか、昨年2022年に、東京都が「育休」に変わる「育業」という言葉を公表して世間の注目を集めている。施策の最前線にいる、東京都子供政策連携室の中島知郎さん(子供政策連携推進部・子供政策推進担当課長)にお話を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)

*本稿では、「子供」「子ども」「こども」は同義です。

男性・女性を問わずに、「育業」ができる社会へ

 一昨年2021年、東京都(以下、都)は、都議会定例会で「東京都こども基本条例」を可決し、同年4月から施行した。そして、昨年2022年4月に、“都の政策全般を子供目線で捉え直し、子供の目線に立った政策を推進すること”を目指して、「子供政策連携室」を設立――福祉や教育の枠組みにとらわれない幅広い視点で子どもに関するさまざまな課題に対応する取り組みを進めている。親子の時間を大切にした働き方を推進するため、「育業」を掲げているのも、この子供政策連携室だ。

中島 私たちの大きなミッションは、“子供の笑顔があふれる社会”をつくることです。そのためには、子育てを通じて親が笑顔になれることが欠かせません。そして、親の笑顔のためには、仕事と子育てを両立できる環境が必要であるため、女性だけでなく、男性の「育業」を推進することも重要なテーマです。男性がもっと育業できるようになり、育児と両立できる働き方が進めば、家庭での育児負担の偏りが減り、産後うつの予防につながるほか、女性が意に反して離職するような事態も防げます。女性の取得率85.1%という数字*1 から、女性の多くは希望すれば育業できているように思われがちですが、妊娠・出産で離職した女性は分母に入っていません。第1子の出産を機に離職する女性は約30%に上ると言われています*2 。また、先日、乳児期に父親が積極的に育児に関わると子供のメンタルヘルスの不調を予防する可能性があるという調査結果が発表されました*3 。こうした観点からも、男性の育業を進めることが欠かせません。

*1 厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」より
*2 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」より
*3 国立成育医療研究センター「乳児期における父親の育児への関わりが多いことが、 子どもが16歳時点でのメンタルヘルスの不調を予防する可能性」より