ウォン紙幣写真はイメージです Photo:PIXTA

韓国の少子化が深刻だ。2022年の出生率が0.78と発表された後は、ウォン安と韓国株安も進んだ。1970年時点では4.53もあった韓国の出生率は、なぜ急速に低下しているのか。その経緯をひもとくと、韓国経済の課題や社会不安の火種も理解できそうだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

韓国の出生率0.78の衝撃

 2023年2月22日、韓国統計庁は22年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数、以下、出生率)が0.78だったと発表した(速報値)。

 人口の増減は経済成長に決定的インパクトを与える。注目したいのは、発表後、ウォンが米ドルなどに対して売られる場面が増えたことだ。韓国株を売りに回る海外投資家らも増えた。出生率の一段低下をきっかけに、韓国経済の先行き懸念は高まり、資金流出は増えつつあるようだ。

 韓国の出生率はこの先も低下基調で推移するだろう。内需にはより強い下押し圧力がかかりやすい。海外に進出し収益を得ることのできる企業と、それが難しい企業の差は一段と鮮明になり、雇用・所得環境の不安定化懸念も高まるだろう。

 今後の展開として、株価がある程度下げれば韓国株の割安感は高まり、短期的に有価証券投資(ポートフォリオ投資)は回復するものと考えられる。ただ、企業による直接投資に関して、韓国から海外に流出する資金の増加懸念は高まりやすい。出生率発表後のウォン安、韓国株安はそうした展開を警戒する投資家の増加を示唆する。