ソニー創業者「井深大と盛田昭夫」が“経営哲学”を語らなかった理由ソニー創業者の井深大氏(右)と盛田昭夫氏。2人が「経営哲学」を語らなかった理由とは Photo:JIJI

日本を代表する世界的企業であるソニーをつくった、井深大と盛田昭夫。どこにもないものを生み出し、新しい未来を切り拓いた2人の名経営者について、ソニーに長年勤務し、創業者たちとともに働いた第一世代である郡山史郎さんの著書『井深大と盛田昭夫 仕事と人生を切り拓く力』(青春出版社)から、混迷の時代を生き抜く道標となる名経営者の「生き方」「働き方」を紹介します。

ソニーブランドを世界に広めた名経営者たちの真相

 井深さんと盛田さんが、戦後日本を代表する名経営者であることは間違いない。およそ20人でスタートした会社は世界中にソニーブランドを広め、今では従業員が10万人を超える世界的な企業グループにまで成長した。

 ところが、二人が経営哲学を語ったところを、私は見たことがない。とくに盛田さんは、自分の哲学を語ることがなかった。

 1993年に経営戦略本部でミーティングしていたときだった。盛田さんが経団連会長に就任することが正式に決まりそうで、私たち経営戦略本部で準備を進めていた。誰かが盛田さんに言った。

「経団連会長は就任時にポリシーや方針を示すのが常なので、考えをまとめておいたほうがいいですね」

 すると、盛田さんは意外なことを言った。