足元の金融市場の動向を巡っては大きな疑問がくすぶっている。米国債市場はリセッション(景気後退)入りに身構えるが、株式・社債市場は最近の下げにもかかわらず、全く想定していない。これだけの巨大市場がなぜ、全く異なるシグナルを発しているのだろうか?これには複数の妥当な答えがある。しかし、いずれも投資家の心が休まるような展開を示唆するものではない。まずは難問から。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が7日、利上げ再加速があり得るとの認識を示して以降、米2年債利回りは、指標銘柄の10年債利回りを1ポイント余り上回っており、スプレッドは1981年以来の大きさに達した。これは逆イールド(長短金利の逆転)として知られる現象で、マネーを長期にわたりつぎ込んでも見返りがないことを意味する。逆イールド現象は景気後退入りが近づいている確実な兆候だと考えるエコノミストは多い。過去の景気後退局面では必ずと言っていいほど逆イールドが発生していたためだ(3年物短期証券と10年債利回りの逆転の方が景気後退の訪れを告げる兆候としてはさらに正確で、こちらも逆イールドがかなり進行している)。
金融市場の矛盾するシグナル 3つの見立て
妥当な説明とはいえ投資家に安心を与えるものではない
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