【周囲の人はどうすればいい?】
無理に慣れさせようとするよりも、
道具の力を借りてストレスを減らそう

 感覚過敏の場合、無理に刺激に慣れさせようとすると、恐怖心が高まり逆効果になってしまいます。「怖くない」「大丈夫」という言葉も、本人の耳には届きません。

 子どもが聴覚過敏で電車に乗れないなら、環境騒音だけをカットするデジタル耳栓や、ヘッドホン型の防音具であるイヤーマフを購入し装着させましょう。適した道具が見つかれば、けろっとした顔で地下鉄に乗れるかもしれません。もちろん、地下鉄に乗らないという選択もありです。

 また、ふいに来る刺激にパニックになることがあるため、「電車が来たからゴーッて音がするよ」などと、あらかじめ知らせて心構えを持たせておくことも必要です。

 感覚過敏でシャワーが苦手であれば、「湯船に浸かるだけでいいよ」と声をかけ、慣れさせていくことが大切です。

 毎日、無理に入れるより、最初は1日おきになどと決め、入るたびに「きれいになった~。いいにおい~」とたっぷり褒めてあげましょう。そしてシャワーハット、やわらかいガーゼやスポンジ、香りのいいシャンプーや石鹸など、本人が好む道具を見つけ、少しでも気持ち良く入れる工夫をするといいですね。湯船におもちゃを浮かべてあげるのも手です。

 感覚過敏は脳の特性。いずれの場合も、わがままで言っているのではありません。

 成長とともに緩和されていくこともありますので、理解し、見守りながら、気長に付き合ってあげてください。

ここがポイント!
・無理に刺激に慣れさせようとすると逆効果
・「怖くない」と言われても、本人は怖い
・気長に付き合うこと。成長とともに緩和されていくこともある

「自分かも?」と思った人へ、生き方のヒント

書影『発達障害の人が見ている世界』『発達障害の人が見ている世界』岩瀬利郎著(アスコム刊)

 聴覚過敏で電車に乗れない人もいる発達障害とは別に、広場恐怖症という不安障害の一種で電車に乗れない人もいます。

 逃げようのない場所にいることに恐怖心を抱くもので、各駅停車なら乗れるけれど、停車駅の間隔が長い急行電車には乗れないという人も多いようです。

 発達障害と同様に、パニック障害、高所恐怖症、閉所恐怖症などの不安障害も努力で解決することは困難です。

 誰かと一緒に行動する場合は、自分は不安障害で急行電車に乗れないということを率直に伝えましょう。

 さまざまな特性を持つ人がいることを認める潮流が近年では高まってきています。あなたの困りごとに耳を傾けてくれる人も少なくないはずです。

 これまで、5回にわたって身近にある発達障害について解説してきましたが、ここまで読んでくださった方は、発達障害の人というのは決して能力が低いわけでも、人間性に問題があるわけでもないことを、ご理解されたのではないでしょうか。

 ひとりでも多くの人が「発達障害の人が見ている世界」を理解し、ともに生きるための一助になれば幸いです。

岩瀬利郎(いわせ・としお)/精神科医、博士(医学)、東京国際大学医療健康学部准教授

岩瀬利郎(いわせ・としお)
精神科医、博士(医学)。東京国際大学医療健康学部准教授/日本医療科学大学兼任教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士・公認心理師。著書に『心理教科書 公認心理師 要点ブック+一問一答 第2版』、『心理教科書 公認心理師 完全合格テキスト 第2版』(ともに共著、翔泳社)など。メディア出演に、テレビ東京系「主治医が見つかる診療所~寝起きの悪い人と寝起きのいい人の体は何が違うの~」、NHK BS プレミアム「偉人たちの健康診断~徳川家康 老眼知らずの秘密~」など。