発達障害の人たちの物事の受け止め方や感じ方、つまり「見ている世界」を理解し、コミュニケーション方法を変えることで、ともに生きることが少し楽になる。そんなテーマで送る第5回は、「感覚が過敏すぎる子ども」についてです。発達障害の中でもASD(自閉スペクトラム症)の人は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚のどれか、もしくは複数が過敏で、大きな音を怖がったり、食べられないものが多かったり、お風呂やシャワーを嫌がったりすることがあります。適した解決法を解説します。(精神科医 岩瀬利郎)
※本記事は『発達障害の人が見ている世界』(岩瀬利郎著)から抜粋・再編集したものです。
味覚、聴覚、触覚…特定の刺激に強く反応し、
ストレスを感じてしまう
発達障害の人の中でも、とくにASD(自閉スペクトラム症)の人は、いわゆる定型発達の人とは五感の感覚が違うことがよくあります。
感覚過敏といって、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚のどれか、もしくは複数がとても敏感で、普通の人なら気にならないような刺激にも強く反応し、大きなストレスを感じてしまう症状です。
味覚過敏の人は、辛味や苦味、酸味などが異常に強く感じられることがあります。その場合、食べられる食材が限られるため、毎日の献立を工夫したり、お子さんの場合は給食ではなくお弁当を持たせたりと、ご家族も苦労されることが少なくありません。
触覚過敏の場合は、普通の人ならなんとも思わないシャワーの水が痛く感じられるため、お風呂が苦手になりがち。お湯が顔や耳にかかるのを極端に嫌がるお子さんもいます。
また、聴覚過敏の場合は、特定の音を強く感じたり、音が怖くて電車に乗るのが苦手、あるいは怖くてまったく乗れないという場合があります。
このように、定型発達の人が感じているものより何倍も大きな刺激を受け止めながら暮らしているASDの人たちは、文字通り、違う世界を感じながら生きていることがあるのです。