『笑う犬の冒険』などの「笑う犬」シリーズ(1998年放送開始)、『ワンナイR&R』(2000年放送開始)、『感じるジャッカル』(2001年放送開始)、『ロバートホール水』(2003年放送開始)、『リチャードホール』(2004年放送開始)などフジテレビ制作による一連のコント番組で、作家として活躍。その期間は、「コントからコントへと渡り歩き、だいたい10年は途切れずに」続いた(宮藤官九郎『いまなんつった?』、38頁)。

小ネタやギャグを散りばめる作品から
生きづらさを扱う『あまちゃん』まで

 その一方で、宮藤官九郎は、テレビドラマの脚本も手掛けるようになる。なかでも出世作となったのが、長瀬智也主演の『池袋ウエストゲートパーク』(TBSテレビ系、2000年放送)である。池袋西口周辺を舞台にカラーギャングのグループが抗争を繰り広げる内容で、長瀬以外にも窪塚洋介、山下智久、坂口憲二、妻夫木聡、佐藤隆太など若手俳優が大挙出演し、多くのファンを生んだ。

 石田衣良の同名小説が原作だが、宮藤官九郎の脚本は、原作にはない小ネタやギャグをふんだんに散りばめたものになっている。このあたりはやはり、高田文夫を尊敬し、コント作家でもあった宮藤ならではのものだろう。そうしたコミカルなテイストは、この後の作品でもクドカン脚本の代名詞になっていく。

 岡田准一主演で草野球チームに集う若者たち(実は怪盗団でもある)を描いた群像劇『木更津キャッツアイ』(TBSテレビ系、2002年放送)や、長瀬智也演じるヤクザが落語に魅せられ、落語家に弟子入りする『タイガー&ドラゴン』(TBSテレビ系、2005年放送)などでも、そうした笑いの要素は変わらない。東野圭吾の推理小説が原作の『流星の絆』(TBSテレビ系、2008年放送)においてさえも、宮藤は笑いを盛り込むことを忘れなかった。

 しかしそうしたなかにも、宮藤は作風の幅を広げている。特に2010年代になると、生きづらさの問題、そしてその背景にある社会状況などを描いた作品も、目立つようになった。

 連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK、2013年放送)は、その意味でひとつ重要な転機になった作品だろう。小ネタの面白さは健在な一方、そこで丹念に描かれていたのは、能年玲奈(現・のん)演じる生きづらさを抱えていた都会育ちの主人公・天野アキが東北の地で居場所を見つけるプロセスであり、そこに、東日本大震災とそこからの復興という大きな出来事が絡んでくるストーリーだった。