コンサル22年の知見を凝縮し話題沸騰中の書籍『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者である安達氏は、「話し方」よりも「話す前に何を考えるか」の方が圧倒的に大事だと言います。本記事では、「知性」と「コミュニケーション」の新法則を綴った『頭のいい人が話す前に考えていること』の中から、常に知的で冷静でいるための2つのポイントをお伝えします。

頭のいい人が話す前に考えていることPhoto: Adobe Stock

キレないためのふたつの技術

先日の記事

「怒っているとき」は、頭が悪くなる

という話をしました。

 怒っているときは、だれでも頭が悪くなるります。
 上司から叱責されたとき。同僚から無能だとみなされたとき。大勢の前で恥をかかされたとき。そういったとき、良い判断のできる人はほとんどいません。

 では、どうすれば感情的にならずに冷静でいられるのか。
 ポイントは2つあり、いつも知的で冷静な人はこの2つを常に意識しています。

①すぐに口を開かない
②相手がどう反応するか、いくつか案を考えて比較検討する

 2002年に行動経済学者でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは著書『ファスト&スロー』(早川書房)の中で、人間の思考には「早い思考(システム1)」と「遅い思考(システム2)」があると述べています。

 簡単に説明すると「早い思考(システム1)」はいわゆる直感的な思考で、「遅い思考(システム2)」は論理的な思考のことを指し、基本的に人間は「早い思考(システム1)」が優位にあるとカーネマンは言います。

 つまり、すぐに口を開いてしまうと「早い思考(システム1)」の直感的な感情先行の発言をしてしまうのですぐに口を開かずに、自分の発言で相手がどう反応するかいくつかのシナリオを比較検討することで「遅い思考(システム2)」を働かせるのです。

 たとえば、あなたの部下が、目の前で部長に理不尽に責められたのを見て、怒りを覚えたとします。
そのときすぐ口を開いた場合、感情が理性を上回り「部長に怒鳴り返す」という不利益な選択をしてしまうかもしれません。

 ところが「すぐに口を開かない」ことで、考える余地が生まれます。ここで何を考えるのか? 
 カーネマンの言う、いくつかのシナリオを検討するというのは、「ここで、怒鳴ったらどうなるのか?」を想像するだけではありません。

・叱られている新人を、別室に一時的に退避させる方法はないか?
・役員の注意を他にそらすことは可能か?

 などと別の案をたくさん出してみることも含まれます。
 あれこれ代案を検討しているうちに、怒りは静まります。
 いくつかのシナリオを検討するのは、“実際に最適な手段を検討するため”でもありますが、冷静になる時間を稼ぐ“間をとるため”でもあるのです。

 ①すぐに口を開かない
 ②相手がどう反応するか、いくつか案を考えて比較検討する

 この2つをぜひ、話す前の習慣にしてみてください。

(※本原稿は『頭のいい人が話す前に考えていること』を抜粋・再編集したものです)

安達裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役
1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、 理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が“本質的でためになる”と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。Twitter:@Books_Apps