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世界最強企業と呼ばれ、毎年成長を続けている米アマゾン・ドット・コムはどのような採用・育成・目標管理をしているのでしょうか? 社員と組織が最高のパフォーマンスを発揮し、持続的に成長し続ける究極の仕組みを、佐藤将之『amazonのすごい人事戦略』(東洋経済新報社)のChapter1の一部を抜粋して紹介します。
アマゾンの根幹をなす14箇条
アマゾンの人事制度の根幹は、OLP(Our Leadership Principles)と呼ばれる14項目から成るリーダーシップ理念にあります。人事制度の根幹にあるということは、アマゾンという組織や、その社員であるアマゾニアンたちの行動の根幹をなすものということができます。つまり、世界最強企業となった今なお、毎年20%の成長を続けるアマゾンの強さの源がここにあるのです。
百聞は一見に如かず、まずはその14箇条をザッと見てみることにしましょう。
アマゾンのOLP(リーダーシップ理念) 拡大画像表示
1)Customer Obsession(顧客へのこだわり)
リーダーはお客さまを起点に考え行動します。お客さまから信頼を獲得し、維持していくために全力を尽くします。リーダーは競合にも注意は払いますが、何よりもお客さまを中心に考えることにこだわります。
2)Ownership(オーナーシップ)
リーダーにはオーナーシップが必要です。リーダーは長期的視点で考え、短期的な結果のために、長期的な価値を犠牲にしません。リーダーは自分のチームだけでなく、会社全体のために行動します。リーダーは「それは私の仕事ではありません」とは決して口にしません。
3)Invent and Simplify(創造と単純化)
リーダーはチームにイノベーション(革新)とインベンション(創造)を求め、同時に常にシンプルな方法を模索します。リーダーは状況の変化に注意を払い、あらゆる場から新しいアイデアを探しだします。それは、自分たちが生み出したものだけに限りません。私たちは新しいアイデアを実行に移す時、長期間にわたり外部に誤解される可能性があることも受け入れます。
4)Are Right, A Lot(多くの場合正しい)
リーダーは多くの場合、正しい判断を行います。優れた判断力と、経験に裏打ちされた直感を備えています。リーダーは多様な考え方を追求し、自らの考えを反証することもいといません。
5)Learn and Be Curious(学び、そして興味を持つ)
リーダーは常に学び、自分自身を向上させ続けます。新たな可能性に好奇心を持ち、探求します。
6)Hire and Develop the Best(ベストな人材を確保し育てる)
リーダーはすべての採用や昇進における、評価の基準を引き上げます。優れた才能を持つ人材を見極め、組織全体のために積極的に活用します。リーダー自身がほかのリーダーを育成し、コーチングに真剣に取り組みます。私たちはすべての社員がさらに成長するための新しいメカニズムを創り出します。
7)Insist on the Highest Standards(常に高い目標を掲げる)
リーダーは常に高い水準を追求することにこだわります。多くの人にとり、この水準は高すぎると感じられるかもしれません。リーダーは継続的に求める水準を引き上げ、チームがより品質の高い商品やサービス、プロセスを実現できるように推進します。リーダーは水準を満たさないものは実行せず、問題が起こった際は確実に解決し、再び同じ問題が起きないように改善策を講じます。
8)Think Big(広い視野で考える)
狭い視野で思考すると、大きな結果を得ることはできません。リーダーは大胆な方針と方向性を示すことによって成果を出します。リーダーはお客さまのために従来と異なる新しい視点を持ち、あらゆる可能性を模索します。
9)Bias for Action(とにかく行動する)
ビジネスではスピードが重要です。多くの意思決定や行動はやり直すことができるため、大がかりな検討を必要としません。計算した上でリスクを取ることに価値があります。
10)Frugality(質素倹約)
私たちはより少ないリソースでより多くのことを実現します。倹約の精神は創意工夫、自立心、発明を育む源になります。スタッフの人数、予算、固定費は多ければよいというものではありません。
11)Earn Trust(人々から信頼を得る)
リーダーは注意深く耳を傾け、率直に話し、相手に対し敬意をもって接します。たとえ気まずい思いをすることがあっても間違いは素直に認め、自分やチームの間違いを正当化しません。リーダーは常に自らを最高水準と比較し、評価します。
12)Dive Deep(より深く考える)
リーダーは常にすべての業務に気を配り、詳細な点についても把握します。頻繁に現状を確認し、指標と個別の事例が合致していないときには疑問を呈します。リーダーが関わるに値しない業務はありません。
13)Have Backbone; Disagree and Commit(意見を持ち、議論を交わし、納得したら力を注ぐ)
リーダーは同意できない場合には、敬意をもって異議を唱えなければなりません。たとえそうすることが面倒で労力を要することであっても、例外はありません。リーダーは、信念を持ち、容易にあきらめません。安易に妥協して馴れ合うことはしません。しかし、いざ決定がなされたら、全面的にコミットして取り組みます。
14)Deliver Results(結果を出す)
リーダーはビジネス上の重要なインプットにフォーカスし、適正な品質で迅速に実行します。たとえ困難なことがあっても、立ち向かい、決して妥協しません。
OLPの誕生前夜
OLPは創業当初から存在していたものではなく、会社が大きくなって、全社を束ねる精神的な約束事をつくる必要に迫られて、ベゾスと幹部社員たちがつくったものです。
アマゾンが創業されたのは1995年ですが、最初の10年間ぐらいは、「みんなで一生懸命頑張るぞ!」という気合いでなんとかなりました。しかしアメリカの本社だけで社員数が5000人を超えるようになると、気合いだけで動いた世界が、もう動かなくなってきたのです。
OLPができたのは2006年~2007年です。とはいえ、それ以前も行動指針は存在していて、「コアバリュー」と「コアコンピテンシー」というものがありました。
コアバリューはアマゾンの社員たちが持っていなければならない価値観であり、全部で7項目。その中には、Customer Obsession(顧客へのこだわり)やFrugality(質素倹約)など、現在のOLPにある項目と同じものもありました。しかしOLPのように評価がコアバリューに基づいて行われたり、日常の仕事の進め方に染みこんだりしていたかといえば、ノーです。
もう1つのコアコンピテンシーは、「アマゾンのリーダーはこういう行動をとります」という、リーダーの指針です。その中には現在のOLPの項目であるDeliver Results(結果を出す)もありました。ほかには、かつてOLPの中にあり、今はもうなくなってしまったVocally Self Critical(間違いを認める)という項目もありました。しかしこの項目は、現在Earn Trust(人々から信頼を得る)というOLPの項目の中に吸収されました。
このように、アマゾンにも最初からOLPがあったわけではなく、それまであった行動指針を踏襲し、練り直し、あとになってつくられたものなのです。
なぜOLPがつくられたのか
コアコンピテンシーとコアバリューは同じような方向を向いているので、この2つを合体させてつくりあげたのがOLPです。
最初はLeadership Principles だったのですが、何年後かにOurがくっついて、OLPという呼び方になりました。
なぜこれがつくられたかというと、アマゾンが急激に成長するに従い、より明確な行動規範を定める必要があったからです。
アマゾンのたどってきた道を振り返ると、ターニングポイントがいくつかあります。おそらくいちばん初めは黒字化したころ。創業以来ずっと赤字が続いていたのが2003年ごろに黒字化し、その後急激に大きくなり、全世界での売上が1兆円を超えます。そのころからいろいろな問題が山積みになってきました。







