5月1日、米シリコンバレー銀行(SVB)、米シグネチャー銀行に続き、地方銀行である米ファースト・リパブリック銀行が経営破綻した。4月1日に三井住友銀行の頭取に就任した福留朗裕氏は、金融業界でさらなる混乱が生じる可能性や今後の収益強化分野についてどう見ているのか。19年間にわたり市場営業部隊に身を置いたマーケットのプロであり、営業部門への異動やトヨタ自動車への転籍などを経験した現場のプロでもある福留氏が、頭取就任に際し語った胸の内を明かす。(聞き手/ダイヤモンド編集部 新井美江子)
“本当の混乱”はまだ起きていない可能性がある
リーマンショックの1年前に何があったか?
――「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」。作家マーク・トウェインはそんな言葉を残したとされますが、金融業界では1997年にアジア通貨危機、2008年にリーマンショックが勃発。そして今春は、米シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻に端を発した大混乱が生じています。
まさにその言葉が現実のものとなっていますよね。歴史が完全に韻を踏んでいる。
――市場営業の経験が長く、香港でアジア通貨危機に、米ニューヨークでリーマンショックに対峙(たいじ)した福留さんは、今回の金融混乱のリスクをどう見ていますか。
実は、“本当の混乱”は、これから生じる可能性があると思っています。僕が恐れているのは、SVBの経営破綻やスイスの金融最大手USBによるクレディ・スイスの救済合併は、リーマンショック時で言うところの「パリバショック」に当たるのかもしれないということです。
今年4月に三井住友銀行の頭取に就任した福留朗裕氏は、入行後の支店勤務を経て19年間にわたり市場営業部隊に身を置いた。そのマーケットのプロは、この先の金融業界にどんなリスクを感じ、一方でどんなチャンスを見いだしているのか。三井住友フィナンシャルグループは5月15日に2023年3月期の決算を発表する。次ページでは、就任に際し福留氏が語った胸の内を明かす。