部長・課長の残酷 給料・出世・役職定年#1Photo by Mieko Arai

日本型雇用慣行の超成功例とされたメガバンクの人事制度だが、ここ最近は「実力主義」の要素が色濃くなってきた。特集『部長・課長の残酷 給料・出世・役職定年』の#1では、日本経済界の中でもずぬけて熾烈なメガバンクの出世レースの最新事情や、各役職の年収水準を、三菱UFJ銀行を例に追った。文系最高峰といわれるメガバンクの部課長の給与とは、いかほどか。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

「週刊ダイヤモンド」2023年4月1日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

行内の“電話帳”で同期の肩書を確認し涙
メガバンクの熾烈な出世争いと給与の現実とは

「銀行員は、行内の電話番号一覧を見て泣いたり笑ったりする。『第一選抜』に誰が入ったかといううわさもきついが、部署や肩書が記載される電話帳では、同期の出世具合を現実として見せつけられるからだ」

 あるメガバンク行員がそう語るように、日本経済界の中でもずぬけて熾烈だといわれるのがメガバンクの出世レースだ。何しろ行員人生は意外と早く終了し得る。メガバンクではいまだに、同期から役員が出る50歳前後になると、関連会社や親密取引先への出向などの選択肢を突き付けられる。

 いきおい、行員にとってはいかに早く昇格するかが重要事項となる。特にメガバンクでは、行員のやる気をそぐまいと考え抜かれた年功序列に重きを置く人事制度が長く敷かれた。そのため、着実に“徳”を積んで最短年次で昇格した行員は、冒頭のように時に第一選抜などと呼ばれ、役員候補としてチェックされるのが常なのだ。

 しかし、そんなメガバンクの人事制度にも、ここ数年で変化が生じている。実力主義の強化だ。三菱UFJ銀行と三井住友銀行は3~4年前、みずほ銀行は2024年4月から、年次よりも、担っている職務の難易度や成果を重んじる人事制度へとかじを切る。

 次ページでは、業界トップの三菱UFJ銀における大学卒・総合職のケースを追って、文系最高峰の給与体系を具体的に探る。三菱UFJ銀の部長とは、はたしてどれくらい高給なのか。早ければ30歳を迎える前に手が届く「一般事業会社の課長級」になれれば、どの程度の年収が“保証”されるものなのか――。

 つまびらかになったのは、三菱UFJ銀の新人事制度が、“アメ”と“ムチ”を駆使した堅牢な立て付けになっていることだ。銀行における実力主義の実態とは。