「ありたい未来」の種を見つけて、育てていく
Photo by YUMIKO ASAKURA
藤本 社内の反応はいかがですか。
浅田 社内報に載せたり、報告会をしたり……と発信はしていますが、このプロジェクト自体が研究開発本部内だけの取り組みだったこともあり、まだ反響を巻き起こすまでには至っていないです。ただ、複数の経営メンバーからは「面白い取り組みだね」と声を掛けられましたし、海外の方々からもかなり好意的な反応をもらっています。それで今、小説2篇の英訳とイラスト作成を進めているところです。
藤本 水谷さんは、今まさにテーマ抽出に取り組まれているんですよね。手応えはいかがですか。
水谷 小説を見せた有識者やBtoCのメーカーさんから、「似たアイデアを考えたことがある」とか、「技術的な問題で頓挫した例がある」といった話を幾つか聞けて、後押しされたような気持ちになりました。「私たちだけの妄想じゃなくて、やっぱりニーズがあったんだ!」って。もちろん、私たちのアイデアとぴったり同じではないんですが、SF思考をやっていなかったら、そんなニーズの存在にすら気付けていなかったと思います。
藤本 今の社会の中にちゃんと「ありたい未来」の種が見つかって、可能性を確信したと。
水谷 はい。ここから先は技術者の腕の見せどころです。今は、思い描いたイメージを実現するために求められる素材特性について理解を深めているところです。これを具体的な技術につなげるのが難しいのですが、誰でも思い付く技術ならとっくに実現しているはずですから、難しいのは当然です。同時に、目指す技術開発が他の用途に使えないか、横展開の可能性も検討しています。
佐々木 今回は初の取り組みだったのでスモールスタートにせざるを得なかったのですが、他の仕事を抱えながらやってもらっているので、メンバーの負担が大きい点は気になっています。期間限定でも「100%これだけにコミットできる」環境づくりができれば良かったのですが。
水谷 確かに、担当業務と並行して進めるのは大変です。ただ、それ以上に好きでやっているので楽しいです。ずっとBtoBの研究をしていたので、手元で最終製品をイメージしながら研究開発できることそのものにやりがいを感じています。紆余曲折はあっても、絶対に新規事業につなげたい。やっぱり、自分の未来を自分でつくってみたいですから。
藤本 今が一番苦しいところかもしれないですね。SF思考で描いた未来像から具体的な技術を生み出す試みは、ビジョンやパーパスといった概念を生み出す以上にハードルが高いと思いますが、お話を聞いていてとてもワクワクしました。これからの展開も楽しみにしています。