バラエティー番組での「性的被害」への扱い
問われるテレビ局の姿勢

 1990年代には、海外のゲイバーに「潜入」した男性タレントが性的被害に遭ったと思われる音声を放送し、それをネタにしたバラエティー番組があった。(参考)『出川哲朗が「最も辛かった」と振り返る20年前の「ゲイ差別ロケ」』(2017年8月20日/wezzy)

 上記記事を読むと、単身でゲイバーに入店したタレントが危険な目に遭いそうになった場合はスタッフが助けに来ることになっていたが、実際は助けが入らず、その後の顛末(てんまつ)をタレントは「そのまま俺は……」「めちゃめちゃ痛かった」と語っている。タレント自身がこれを繰り返しネタにし、また2017年の別番組の放送でも他の出演者とともに笑いに変えていたことがわかる。

 当然ではあるが、批判されるべきはタレントではなく、制作した上で問題ないとして放送したテレビ局の姿勢である。

 1990年代と今では世間の感覚が違うとか、当時のロケがネタとして語られた2017年と2023年でも社会の認識は違うということは、もちろんある。現在の感覚で過去を裁くことを懸念する声もあるだろう。

 しかし現代の視点からは、男性の性被害者たちがこのような放送を見て、どのように感じたかということを考えなければならない。

 人気タレントの出演する人気番組なのだから、影響力は大きかったはずだ。男性から性加害を受けた男性タレントがそれをネタにする様子を見て、「男性の性被害は笑いに変えなければならない」「大したことではないのだから、男なら乗り越えなければならない」と思わざるを得なかった人がいることは、想像に難くない。

 ましてや、タレント事務所に所属していたのであれば、「タレントならば、このようなことも受け入れなければならないのだろう」と思った人もいたのではないだろうか。