今の40代以上は、義務教育時代に体罰が当たり前だった世代ではないだろうか。もちろん、今もまだ体罰は完全にはなくなっていないが、昔よりは世間の目が厳しくなったことは確かだ。いじめ、体罰、ハラスメントといった問題については、ここ数十年で価値観がアップデートしつつも、根本的な解決に至っていない分野だ。体罰やハラスメントが当たり前の時代に育った世代はより良い未来のために、何を考えていけばよいのか。(フリーライター 鎌田和歌)
40代以上がやりがち? 自分が乗り越えられたから見て見ぬふり
大人たちが、自分たちが過去に受けた傷つきをいったん整理してみるのが、ハラスメント対策において有効なのではないか。
筆者がこんなことを考えたのは、音楽プロデューサー・松尾潔氏が早稲田大学元教授のハラスメント裁判について語った記事(『松尾潔 「私もかつて暴言受けた」早大元教授のセクハラ裁判にコメント』(RKB毎日放送/2023年4月10日)を読んだからだ。
問題の裁判というのは、早稲田大学の元教授・渡部直己氏から「卒業したら俺の女にしてやる」などの発言を受け、セクシャルハラスメントの末に自主退学を余儀なくされたとして元学生の作家・深沢レナさんが損害賠償を求めていた訴訟。4月6日、東京地裁は深沢さんの訴えを認めて渡部氏と早稲田大学に55万円の支払いを命じた。
松尾氏はこのニュースについて、自分も早稲田大学の学生だった30年ほど前に渡部氏の授業で暴言があったとつづる。また、そのような言動をするのは渡部氏に限った話ではないとし、これ以外にも高校時代には教師から体罰を受けて「頬を5針」縫うケガをした過去を明かしている。
松尾氏は次のように、被害を黙って見過ごしてきたことに対して自責の念を吐露している。
高校や大学でなくても、例えば自動車教習所で、私の若い頃はすごく口の悪い教官がいましたし、セクハラに遭った女性もいました。でも、みんな免許が欲しいし「ちょっと我慢すれば終わること」と、通過儀礼のような感じで、特にそれに対して声を上げることもありませんでした。
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