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「日本人は空気を読む」と言われることがある。礼儀正しく名誉を重んじる代わりに不安と同調圧力が強く、ひとたび怒り出すと手がつけられない。日本人は、日本においても海外においても、おおまかにそのようなイメージで捉えられているといってよいだろう。
これまでこうした性質は、主に文化的なものだと思われてきた。「島国」という言葉がなかば自嘲的に使われる点からは、地政学的なイメージも強いようだ。しかし実は、日本人を日本人たらしめているのは「脳」なのかもしれない。
本書の著者である中野信子氏は、日本人の脳はセロトニントランスポーターの密度が低いことに言及している。セロトニンとは安心感をもたらす脳内物質のひとつであり、日本人はそれを再取り込みする機能が低いことを意味する。すなわち、不安が強い日本人の性質は、教育や文化以前に、体質的なものであるという側面が強くあるということになる。
とはいえ、変えられないからといって悲観することはない。メカニズムを理解することは、的確に脳をコントロールし、よりよい方向に向けていくことに繋がっていく。政治経済から個人の生き方まで、その単位が人間である以上、脳に向き合うことは避けられない。脳についてその性能を詳しく知ることは、そのまま人間と世界を理解することになるのである。(池田明季哉)