不安がちで群れたり、集団からはみ出す人を攻撃したりしやすいのは日本人の特性…と諦めぎみによく言われます。日本人を縛る「同調圧力」とどう向き合えばいいのでしょうか?日々人間関係について考え続ける演出家の鴻上尚史氏と脳科学者の中野信子氏が、現代社会の息苦しさから抜け出し、心地良く生きるためのコミュニケーションについて語り尽くしました。鴻上氏はコロナ禍で「好きなことをしていてたたかれる国になった」と感じたそうです。また、サッカーW杯の日本代表選手への誹謗中傷も話題となりましたが、その根底にあるものについて考える、『同調圧力のトリセツ』(小学館新書)からの抜粋です。
大人になった今だから言えること
鴻上 この国の閉塞感やレッテルの貼り方に対する抗議の挙げ方から考えると、僕と中野さんはそんなに違う方向を向いているとは感じられないんです。でも同じ方向を向いている人同士の対談は、実は面白くなかったりするんですよね。何を言っても、お互い、そのとおり、そのとおりで終わっちゃうから(笑)。
中野 そうですね。ある問題がタワーのように真ん中にあったとして、その問題を私が東側から見ていて、鴻上さんは西側から見てるような感じの対談になったらいいですよね。
鴻上 そうなるといいです。同じ方向、同じサイドからだとダメなので。
中野 私はずっと集団と個の関係に興味があるんです。鴻上さんは、作品の中で、排除されている人の視点で、どうして集団が生贄を必要とするのかを、すごく詩的に情緒的に書かれていますよね。まだ高校生くらいの頃に鴻上さんのスクリプトを読んで、これは同じ問題意識を持った人だ!と感銘を受けて、ボロボロになるまで読みました。あまりに読むので、もう3冊同じのを買っていると思います。