足腰の痛み、コリ、便秘、むくみ、倦怠感、不眠といった、なんとなくの不調。
『すごい自力整体』の著者・矢上真理恵さんは、「不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語る。「自力整体」とは人の手を借りずに、「整体施術のプロの技法」を自分におこなえる人気メソッド。東洋医学をベースにしながら効率的に問題解決するのも魅力の一つ。原因がよくわからない痛みや不調の解消を目的とする実践者は多く「あったかくて柔らかい体になり、体がラクになる」と話題。なぜ自力整体で体がラクになるのか?(構成/依田則子、写真/榊智朗)
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家

ウォーキングで痛みが出てませんか? 整体プロも散歩前に実践するおすすめワーク

自分ですばやく体を元にもどせる方法を知っている

――「自力整体」は痛みや不調がラクになったと評判です。

矢上真理恵(以下「矢上」):そうですね。とくに自律神経を整えることで「痛み」を和らげることもできます。

――それはどういうことですか?

矢上:私たちの脳は、体のある部分に痛みが出ると、脳からセロトニンやノルアドレナリンという過剰な痛みを和らげる鎮痛薬的なホルモンが分泌されるんです。これを「下降性疼痛抑制(かこうせいとうつうよくせい)」といいます。とくに脳が楽しいことに夢中になっているとき、このホルモンは分泌されるそうです。

 しかし、このホルモンが分泌されにくい人は、過剰に痛みを感じやすい。とくに慢性的な痛みがあると痛みに対して不安・恐怖・不快といった感情が根づいて脳がストレス状態。すると交感神経が興奮しやすくなって、さらに血流が悪化。鎮痛に役立つホルモンも分泌されにくくなるというわけです。

――なるほど。交感神経が優位の状態が長く続けば、痛みも長く続きそうですね。

矢上:「自力整体」をおこなうとリラックスできて副交感神経が優位になり、鎮痛に役立つホルモンが分泌されやすくなるので、痛みがラクになるんです。

――痛みが出たら、すばやく自分で体を元に戻せる方法を知っていると安心ですね。

矢上:「自力整体」はその発想が原点なんです。自力整体の考案者である私の父・矢上裕は35年前、鍼灸師・整体治療家として活躍していたんですが、全国から患者さんが訪れるくらい繁盛しても、気がつけばリピーターの方も多くて。また翌月も痛みを抱えてやってくる、という現実に矛盾を感じたんです。

 そこで父は、お客様ご自身が自分の力で痛みを和らげる必要性を感じて、効果の高い施術をだれもが自分でできるように考案したのが「自力整体」なんです。

――たしかに「痛い」「不快」を感じたときに、今すぐ自分で解決できるのはたすかります。はじめて『すごい自力整体』のワークをやってみたとき「この刺激はどこに効くのかな?」と半信半疑でしたが、終わってみると靴を履くと靴がブカブカになっていて、むくみが消えて驚きました。

矢上:教室でも、足がサイズダウンしたことで靴を間違えて履いて帰ろうとする生徒さんも多いんですよ。

ウォーキングが健康法ではなく「疲れ増大法」になっていませんか?

――とくに「自力整体」の骨盤まわりを調整するワークをおこなうと、なぜか痛かった腰以外の場所、膝(ひざ)や肩の痛みがラクになっていたので驚きました。

矢上:骨盤は人体のベースなので、骨盤まわりを中心に調整すると、首・肩・背中・足腰の痛みが効率的に解消されやすくなるんですね。

――ところで、ウォーキングで長距離を歩くことで膝(ひざ)に痛みが出たり、足腰を痛めてしまったという声をよく聞きます。これも、骨盤のゆがみのせいでしょうか?

矢上:骨盤のゆがみのサインかもしれません。痛みが出やすい人は、次のイラストのように、骨盤が左右どちらかに傾いている状態(図参照)が多いです。

ウォーキングで痛みが出てませんか? 整体プロも散歩前に実践するおすすめワーク

矢上:たとえばイラストのように左の骨盤がさがって、右が上がっている人。この状態で長時間歩くと、右足だけ高下駄(げた)を履きながら歩いているようなものですから、左ひざに負担がかかりつかれます。やがて右の股関節と腰、さらに背中から首にかけてコリが溜まっていき、ウォーキングが終わったあとは疲労困憊。健康法ではなく、「つかれ増大法」となってしまいます。

 じわじわと悪化して整形外科や整骨院へ、という結果になっている日本人がとても多いのです。ウォーキングをおこなう前は、脚の長さをそろえておくことが大切です。

――ぜひ脚の長さをそろえるワークを教えてください。

ウォーキングで痛みが出てませんか? 整体プロも散歩前に実践するおすすめワーク矢上 真理恵(やがみ・まりえ)写真左
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『DVDで覚える自力整体』『DVD3分から始める 症状別 はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗