コクよし切れよし燗でよし、近江米で醸す生酛造りの純米酒

新日本酒紀行「北島」14代目の北島輝人さん Photo by Yohko Yamamoto

 白い土壁と瓦屋根の門構え、滋賀県湖南市の旧東海道に面した北島酒造は、1805年創業の老舗蔵だ。2013年に、14代目を継いだ北島輝人さんは、地元銘柄の「御代栄(みよさかえ)」に加え、新銘柄「北島」を立ち上げた。甘くて華美な香りの酒の流行に危機感を覚えた中、お燗すると豊かにさえて切れの出る生酛の酒に出会い、日本酒の未来に可能性を感じる。そこで、滋賀県産米を用い、一本芯の通った骨太の純米酒を生酛造りで醸すと決めた。

 当時の杜氏は80歳のベテランだったが、生酛造りは初経験。一緒に挑戦してくれたものの、酛すり作業は困難を極めた。やみくもにすりつぶしては駄目で、良いあんばいが必要。すりつぶす状態の見極めに苦労する。加えて、手間のかかる力仕事のため人手が足りない。そこで飲食店や酒ファンに声を掛け、手伝いを募集した。すると、酛すり体験者が酒の応援団に。