企業理念のバリューとカルチャーを明確にする

──そのときに一体感や仲間意識が生まれるのでしょうか?

佐宗 そうですね。理念を一緒に作っていくときには、大事にしていきたい共有ルールを自分たちでつくることになるので、そのプロセスを通じてすごく一体感が生まれます。

 一体感を生むためには、共通の価値観としてのバリューを明確にすることが有効です。バリューがなくてもおそらく事業は成立するんですけど、仲間意識は生まれにくい。特に、リモートワークが広がってくると、一体感や仲間意識を感じにくくなる。物理的に離れていると「同じ組織にいる」という感覚を持ちにくいですよね。だから僕のところにも、「社員たちに『同じ組織にいる』感覚を持ってもらうためには、いったいどうすればいいでしょうか?」という相談が、コロナ禍以降すごく増えています。

──そう言われてみると、今日はBIOTOPEさんのオフィスにも佐宗さん以外誰もいないようですが、みなさんリモートワークなんですか?

佐宗 さっきまで一人いましたけど誰もいなくなっちゃいましたね。今メンバーが20人弱いるんですが、リモートワークの割合が限りなく増えています。みんながフルタイムの正社員というわけでもなく、業務委託という働き方を選択したメンバーや、フリーランスとして独立したあと週3~4日勤務しているメンバーもいます。

 それぞれにとってのやりたいことを重視しつつ、多様な働き方を共存させることがBIOTOPEの次のチャレンジです。これからは、リアルオフィスがなくても企業理念と組織文化がしっかりしていれば、組織の課題はある程度乗り越えられるかを実験する段階ですね。

みんなで問い続けて試行錯誤を繰り返す

──本に書いてあることを佐宗さん自身も実験しながら、試行錯誤を繰り返しているわけですね。

佐宗 それはありますね。『理念経営2.0』に書いたテーマを実践している会社も、常に試行錯誤していると思います。なぜなら答えがないから。だからずっと「問い」の連続で、問えば問うほど試行錯誤をやり続けるしかないんですよ。本でもいろんな企業のケースを取り上げましたけど、どの企業も、絶えざる問いと試行錯誤の結果として、今があるんじゃないかと思います。

 リモートワークで誰とも会わなくても仕事ができてしまうと、「会社という“群れ”で働く必要ってあるのかな?」と僕も思ったことはあります。ですが、僕は一人では解決できない大きな問いを、仲間たちと一緒に試行錯誤しながら考え続けていきたいですし、そのためにはやっぱり会社でなければならないと思っています。

──BIOTOPEはどんなミッションを掲げているのでしょうか?

佐宗 「意思ある道をつくり、希望の物語を巡らせる」が僕たちのミッションですが、気候変動とか大きな問題が山積しているこの時代に、子どもたちにどんな希望の物語を語ってあげればいいんだろう?という問いの答えが、僕自身まだわからないんです。だから、同じ理念と問いを共有する仲間がほしいので、リモートワークをやっていても、会社として群れるということは続けたいと思ったんですよね。

 そういう意味でいうと、「良い問い」を持っている組織は強いと思います。将来的には、組織ありきではなく、同じ問いを共有している者が集まって組織をつくるケースも増えていくでしょうね。

 実際、さまざまな組織に属することが普通になってきているし、プロジェクト型である課題解決を目的とした人を集めたコミュニティをつくって、ブロックチェーン上で完結させるようなDAOと呼ばれるような動きも出てきています。目的と価値観を共有できる「複数」のコミュニティに属しながら、自分のアイデンティティのバランスをとっていく形が、これからの特に若い世代の当たり前の働き方になっていくのではないかと思っています。

リモートでも「一体感」が失われないチームは、何をやっているのか?