足腰の痛み、頭痛、生理痛、コリ、むくみ、冷え性、便秘、不眠といったなんとなくの不調。
『すごい自力整体』の著者・矢上真理恵さんは、「不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語る。「自力整体」とは「整体施術のプロの技法」を自分におこなえる人気メソッド。東洋医学をベースにしながら効率的に問題解決するのも魅力の一つ。痛みの解消を目的とした実践者も多く「ゆるめるだけで、コリや痛みがラクになる」と話題。なぜ自力整体でつらいコリや痛みが解消されるのか? 今回は自力整体の考案者である矢上裕さん(矢上真理恵さんのお父さん)もお招きしてお話をうかがいました。
(構成/依田則子、写真/榊智朗)
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
人生が変わる?「脱力睡眠」のすすめ
――梅雨の時期は気圧の変化や湿気により、頭痛や神経痛、疲れやだるさが出やすいです。体が快適になる「自力整体」があればぜひ教えてください。
矢上真理恵(以下「真理恵」):ジメジメするこの時期はとくに痛みや不調に悩まされる生徒さんは多いです。「自力整体」をおこなうと血流が良くなり体はスッキリしますが、とくに「コリや痛みの解消法」については、鍼灸師・整体治療家として40年以上の治療経験をもつ自力整体考案者の父に説明してもらいましょう。
矢上裕(以下「裕」):ここでお伝えするコリや痛みは、「体のゆがみ」や「加齢」などによる慢性的な痛みに対する実践法をお伝えしますね。深刻な痛み、たとえば医学で原因を特定しなければならない痛みは、病院で必ずお調べください。
体のどこかが痛いと不安になりますよね。わかります。でもコリや痛みのメカニズム、つまり、「1、今、どうなっているのか。2、何が原因なのか。3、どうしたら解放されるのか」を知ることで安心しませんか?
――そうですね、コリや痛みの発生原因がわかると対処法も見つけやすいです。
裕:コリや痛みのメカニズムはこうです。
1、筋肉に(緊張やゆがみなどで)無意識に力が入っていて抜けない部分がある。
2、筋収縮により血管が圧迫されて血流不足になり酸素欠乏になる。
3、「ブラジキニン」といった痛み物質を発して体に痛みを知らせる。
ではどうするか。筋肉を脱力させることでコリや痛みは和らぎます。
筋肉が脱力するのは睡眠中ですから「脱力睡眠」を目指します。
寝床は最高の「からだ回復装置」。私は40年間、コリや痛みで悩んでいる人を見てきて、「脱力睡眠」以外の解消法はないと断言できます。どんな名人の手技よりも、この「脱力睡眠」が筋肉の緊張をゆるめることができるのです。睡眠中の寝返りも最高の自力整体です。こどものように寝返りが多いのも健康な証拠です。
ぐっすり熟睡できるので、コリや痛みのほか、疲労回復、代謝アップ、便秘解消などにも役立ちます。習慣的に「脱力睡眠」できれば気力を取り戻し人生が変わるといっても過言ではありません。
説明が長くなりましたが、今日から「脱力睡眠」できる夜の過ごし方を工夫してみましょう。おこなう流れは次のとおり。
「脱力睡眠」できる方法
1、仕事や家事を終えたら少し歩いて、風呂に入って体を温め、ゆるめる。
2、「自力整体」でさらに緊張している部分をゆるめる。
3、「ゆっくり、よく噛み、腹6分(※ムリはしないように)」の夕食を摂り、寝る前に「少しおなかが空いているかな」くらいにしておく(完全空腹にするとかえって眠れない)。
4、夜は薄暗い照明で過ごし、パソコンやスマホをやめ、23時には眠っている。
5、朝起きた時に、痛かった部分がゆるんで、コリや痛みが取れているか確認。
という順番でコリや痛みはラクになります。できたら慢性の痛みで困っている人に、教えてあげてください。
――2の「『自力整体』でさらに緊張している部分をゆるめる」ですが、どのような自力整体がよいでしょうか? 真理恵さんの著書『すごい自力整体』から紹介していただけますか?
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。
監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『DVDで覚える自力整体』『DVD3分から始める 症状別 はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗