コミュニティにおける3つのポイント
コミュニティと聞くと、地域コミュニティや従来のマーケティング理論で扱われる「顧客との接点」を想起する方が多いかもしれない。しかし、ここで論じるコミュニティは、個別のステークホルダーとの単一の対話と共創の場としてのそれではなく、複数のステークホルダーを包含したアプローチである。
CSV(共通価値の創造)やステークホルダー資本主義などを挙げるまでもなく、企業経営はもはや一企業のためのものではない。あるステークホルダーと企業との関係は、別のステークホルダーとの関係に影響を与えるといった波及作用があり、従来のような1対1の関係ではなく、全ステークホルダーとの相互関係を深めるために存在する場として、コミュニティをヒト・モノ・カネ・情報に次ぐ第5の経営資源として包括的にとらえるべきである。
ステークホルダーとのコミュニティを経営資源としてとらえ直すことにより、従来の経営資源をエンパワーさせ、ステークホルダーとの共有価値、企業価値を向上させることが、企業経営にとって今後さらに重要度を増すことは、セールスフォースの例から読み取れる。
とはいえ、実際にコミュニティを経営資源としてとらえるといっても、具体的な方法は明らかにされていない。そこで、次の3つのポイントを提言したい。
(1)パーパスの共有化:パーパスと方向性を合致させ、共感をベースにつながること
(2)自律分散型の意思決定:トップダウンでないコミュニティ内での自律分散型の意思決定
(3)知識・ノウハウの共有化:共創を促進するためのコミュニティ内での知識のシェア
この3つのポイントを理解するために、少し趣向を変えて、グリム童話の「ブレーメンの音楽隊」を例に説明してみたい。