「企画の仕事」と聞くと、「おもしろそう!」「花形の仕事」といったイメージを持つ人が多いのではないだろうか。自分のアイデアを形にして、商品開発をしたり、イベントを開催したりする。おもしろいCMや広告を考えて話題になる。そんな「ワクワクする仕事」といった印象だ。一方で、実際に企画の仕事に携わることになった時に「アイデアが全然思い浮かばない」と思い悩んだり、「アイデアはいいけれど、企画としては成立していない」と上司からダメ出しをされたりする人も少なくない。『発想の回路』の著者である中川諒氏もそんな一人だったという。一体どうすれば良いアイデアや企画を考えることができるのか。本記事では、本書の内容をもとにアイデアと企画の違いや、いい企画の条件などについて解説する。(構成:神代裕子)
おもしろくも苦しい、企画の仕事
「企画の仕事」というと、華やかな仕事に思えるがかなり生みの苦しみに悩まされるものである。
ああでもない、こうでもない、と考えて「これならきっといける!」と出した企画が上司に一蹴され、涙を飲んだことがある人も少なくないはずだ。
「どうしてこの企画のおもしろさがなんでわからないんだ!」と憤慨しているうちはまだいいが、「自分には企画の才能がないんだ……」と落ち込んで立ち直れなくなってしまうことも多々ある。
それでも仕事は待ってくれない。「ああ、今日もまたあの企画考えなくちゃ……」と頭を抱える日々。
まだ企画を立てることに慣れていないうちは、特にこういった状態に陥りやすい。
アイデアは思いつき、企画は合意形成
おそらく、上司や先輩からは、企画にダメ出しをされた時、次のように言われた人も多いのではないだろうか。
「アイデアはいいんだけど、企画になっていないね」
「ちょっとアイデア先行になってしまっているね」
もし、そう言われたのであれば、「アイデア」と「企画」の違いがわかっていない可能性がある。
本書の著者である中川諒氏は、この2つの違いを「アイデアは思いつき、企画は合意形成」と説明する。
中川氏が考えるアイデアとは次のようなものだ。
一方で、企画は自分だけ良ければ良いというものではない。
アイデア出しが「電球のカタチをつくること」であれば、企画作りはその電球に誰かを照らす「明かりを灯すこと」であり、その明かりを灯すには回路が必要なのだ、と中川氏は語る。
自分本位で考えたもの(アイデア)を、周りを巻き込めるもの、周りに納得してもらえるもの(企画)にしなければならない。
それができていないと「アイデアはいいんだけどね……」と言われてしまうのだ。
押さえておくべき、「いい企画」の基準
中川氏によると、いい企画の基準とは次の2つだ。
1つめは「ギャップがあっておもしろいこと」。2つめは「誰かの欲望が叶えられること」。そして、「この2つを他人と合意できるものがいい企画」なのだ。
本書では、ヘアワックスの新商品の開発を例に説明している。
若手のAさんとBさんがそれぞれ案を持ってくる。解決しようとしている問題は、どちらも「髪の毛を直したあと手に残ったヘアワックスのベタベタが嫌」という点だ。
Aさんの案は「ハンドクリームにもなるヘアワックス」。髪の毛を直したあと、そのままハンドクリームとして使えるというアイデアだ。
そして、Bさんの案は「食べられるヘアワックス」。手に残ったヘアワックスを舐めとったり食べたりできる、というものだ。
この2つに対して、中川氏は「どちらもヘアワックスという商品からはギャップがあるおもしろい商品になっているが、誰かの欲望が叶うのはAさん案であるのは明らか」と指摘する。
なぜなら、サバイバルな極限状況を除いて、ヘアワックスを舐めたり食べたりしたい人はいないからだ。
このように、ただおもしろいだけでは、その企画をする意味がない。
「ほら、おもしろいでしょう? この商品」と売り出したところで、消費者に「この商品なら、悩みが解消されそうだ」「そうそう、こういう商品が欲しかったの!」と思ってもらえないと売れはしないだろう。つまり、消費者の「欲望」が叶えられた商品でないと、誰もお金を出してはくれないということだ。
CMや広告も同じことが言えるだろう。CMや広告にはクライアントがいて、そのクライアントは自社の製品やサービスなどを消費者に伝えるために広告を打つ。
だから、いくらアイデアがおもしろくても、「集客したい」「このサービスを知ってほしい」という点が伝わらなければ広告を打つ意味がない。
かといって、真っ向からこちらの言いたいことを言った広告では誰も耳を傾けてくれはしない。だからこそ「ギャップがあっておもしろいもの」という基準が必要になるのだ。
発想の回路を手に入れ、効果的な企画を立案
もし、本記事を読んで「ああ、自分はただアイデアを出していただけだったな」と感じた方は、本書を手に取ることをおすすめする。アイデアを企画にしていく方法を「発想の回路」としてわかりやすく教えてくれるからだ。
さらに、さまざまな角度からアイデアを出すための工夫なども紹介されているため、いつも結果を出す人がどのように頭を使って企画を考えているかがよくわかる一冊となっている。
効果的な企画を出し続けるための秘伝の思考技術を、ぜひ手に入れてほしい。