企業にとって、ネット上での評判が怖い時代。もし、SNS上で批判や攻撃をされたら、どう立ち回ればいいのだろう?SNS炎上の対策支援も行うPRの専門家が、味の素とスープストックトーキョーを事例に、ピンチをチャンスに変える具体的方法を伝授する。(PRストラテジスト 本田哲也)
SNSのネガティブ投稿に
“即対応”が称賛された味の素「ギョーザ」
それは5月11日、あるTwitterユーザーが「味の素の冷凍ギョーザがフライパンに張り付いた」と投稿したことが発端だった。味の素の「ギョーザ」は、市販用冷凍食品で売り上げ日本一を誇る看板商品。フライパンで簡単に羽根つきギョーザを調理できることがウリだ。それなのに、羽根がフライパンにくっつき、焦げてしまったギョーザの写真が投稿された。
味の素側の反応は速かった。翌12日には味の素冷凍食品公式Twitterが次のように返信した。
「突然のご連絡を申し訳ありません。フライパンで弊社のギョーザを焼いたところ、張り付いてしまったとのツイートを拝見いたしました。弊社は、誰でも失敗なく、羽根つきギョーザが焼き上がる感動をお届けすることを目指しております」
「大変勝手なお願いでご面倒おかけいたしますが、このたび調理にご使用いただきましたフライパンを、着払いにてご提供いただけないでしょうか?焦げ付いてしまうフライパンの状態を確認させていただき、研究・開発に活用させていただきたく考えております」
この返信がTwitter上で話題になり、「味の素の本気を見た」「商品開発にかける情熱すげぇ」と驚きの声が集まった。
それから1カ月弱たった6月17日、同社は公式Twitterで、R&D部門がギョーザの張り付きについて、使い込まれたフライパンを用いて調理・検証したことを報告。「長年使い込んだフライパンはコーティングの剥(は)がれや細かい傷などが生じており、他の食材も同様に張り付く可能性が高い」ため、「フライパンには寿命があり、買い替えをご検討いただく必要がある」とした上で、コーディングが剥がれたフライパンで調理をする場合は、「少量の油をひく」または「弱火で10分蒸し焼きにする」ことで張り付きが改善できると提案した。
すると、一連の流れに対して、「しっかりと検証結果を公表するのが流石!」「『フライパンの問題』と安易に回答するのも可能だと思うけど、そのさらに先とかホント凄い」などとSNS上で絶賛された。
こうして味の素冷凍食品は、ネガティブな投稿に対して素早くアクションを起こし、SNSのポジティブな反応を引き出すことに成功した。実は同社、3年前にも「手間抜き論争」で注目を集めたことがある。ある女性が投稿した「(夫に冷凍ギョーザを使うことは)手抜きだ、と言われた」というツイートに反応し、「冷凍ギョーザを使うことは『手抜き』ではなく『手“間”抜きです』と公式アカウントが投稿し、多くの賛同を得たのだ。
スープストックトーキョーの離乳食騒動
ネット炎上にPR専門家の対応は?
SNSの反応を即座に捉えて、最終的には良い評判を獲得した味の素冷凍食品。実は、筆者が率いるPR事務所のクライアントでもある。
もうひとつ、実は私たちがアドバイスさせてもらった事例――記憶にも新しい、スープストックトーキョーの離乳食騒動について解説しよう。
経緯はこうだ。4月18日にスープストックトーキョーが、離乳食の無料提供を発表すると、当初は歓迎ツイートが多かった。ところが徐々に、「クレクレなママと子どもの奇声で地獄絵図になりそう」などと批判ツイートが急増。すると今度は、そうした批判に驚いたり、非難したりするツイートが続出し、大混乱。いわゆるSNSの“炎上”に至った。